からだ・美容
妊娠を目指すなら、男性は禁欲したほうが良い? 妊活にまつわる疑問を専門家に聞いた
公開日: / 更新日:
妊活とは、妊娠を望むカップルが妊娠に向けて行うさまざまな活動のこと。活動に明確な定義はありませんが、排卵日を自分で予測して性交する「自己タイミング」から始めることが一般的です。妊活中にふと疑問に思うことがあっても、うやむやにしていることが意外に多いかもしれません。妊活の正しい知識を広める活動をする不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんに、妊活にまつわる素朴な疑問や誤解について伺いました。今回は、男性の禁欲やセックスの頻度についてです。
◇ ◇ ◇
長期間、精子をためたほうが妊娠しやすいのは本当?
排卵日を自分たちで予測して自己タイミングで妊娠を目指すカップルから、よく聞かれる質問があります。「男性側はできるだけ長く禁欲して、精子をためたほうが妊娠の確率が上がりますか?」というものです。
答えは「ノー」。妊娠のために、無理に禁欲して精子をためる必要はありません。
確かに、長く禁欲したほうが精子の数は増えます。しかし、禁欲の期間が10日以上になると、精子の質が低下して、精子の運動率が下がったり、奇形精子が増えて元気が良い精子の動きを邪魔したりしてしまいます。また、DNAが損傷して、着床率の低下につながるという報告があります。
妊活中に禁欲を徹底している男性もいるかもしれませんが、禁欲が長いほど質の悪い古い精子がたまってしまいます。そのため、精子検査に問題のない場合、禁欲は2~3日程度を目安にするのが良いでしょう。精子は射精されると、精巣で新たな精子が作られます。それが繰り返されることで造精機能が保たれるので、射精の回数が多い方が良いのです。
妊娠を目指すならば、禁欲よりも禁煙のほうが大事です。タバコには、体にさまざまな悪影響を及ぼす有害物質が多く含まれています。男性の場合、喫煙によって精子の数の減少や運動率の低下が起こり、不妊の原因になる場合があります。
排卵日だけのセックスでは妊娠は難しい
自己タイミングで妊娠を目指すならば、予測した排卵日だけ性交しても妊娠は難しいです。卵子の寿命は、排卵後24時間です。精子は、射精後に1~2時間で排卵した卵子を取り込む卵管采にたどり着き、寿命は2~3日です。
したがって、妊娠のためには、排卵日だけではなく、排卵日よりも少し早めの時期から1~2日ごと、目安としては排卵日までに3~4回の性交があるのが良いでしょう。排卵時期の性交回数が増えるほど妊娠率は上昇します。
ちなみに排卵日は、生理が規則正しい女性であれば、「月経周期マイナス14日目頃」が予測の目安です。28日の月経周期なら生理初日から14日目前後、32日周期の方なら18日目前後になります。
また、基礎体温でいうと、低温期から高温期に入る直前が排卵の時期になります。尿から排卵を判断できる排卵検査薬が薬局で売られているので、排卵日の予測のために上手に活用するのも良いでしょう。
妊娠を目指して、排卵日前はほぼ毎日性交しているのに、3か月経っても妊娠しないという場合は、カップルで医療機関の受診をして検査を受けることをおすすめします。検査は「自分には関係ない」と思う男性が多いですが、妊娠しない原因の約半数は男性にあります。原因を早めに見つけて対応しましょう。
(Hint-Pot編集部、小松原 千暁)
小松原 千暁(こまつばら・ちあき)
不妊症看護認定看護師、生殖医療コーディネーター、妊活支援ナース育成コーチ、日本生殖看護学会理事。不妊治療の専門クリニックに約20年間勤務した経験より、日本の性教育に妊娠する力の妊孕性(にんようせい)に関する情報が少ないことを実感。現在は生殖医療の看護師を指導する一方で、不妊治療を受ける患者さんや若い世代に向けて、自ら選択できるように妊活の正しい知識を広める活動を行う。妊活についての情報サイト「妊活の歩み方」でお役立ち情報を発信中。