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食欲の秋 太りにくい3つの食事の習慣とは 栄養士に聞く

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

秋はおいしいものがたくさん(写真はイメージ)【写真:写真AC】
秋はおいしいものがたくさん(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 秋はおいしい食べ物がたくさんあり、食欲も出てきてつい食べすぎてしまいます。食欲の秋を、上手に乗り切るために心がけたい食事のポイントはあるのでしょうか? 秋に食欲が増す理由や太りにくい食事の工夫、食べすぎない習慣について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

秋になると食欲が増す理由

 秋は実りの季節。おいしいものがたくさん収穫され、店頭に並びます。加えて、過ごしやすい気候になり、夏の暑さでバテ気味だった体が回復し始める時期。その際、エネルギーが必要になるので、食欲が増しやすいともいわれています。

 秋になると日照時間が短くなっていくのも、食欲増加の要因のひとつです。心身の安定を図る幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」は、日光を浴びることによって生成が促進されますが、日が短くなることで減少します。

 すると、私たちの体は、減少したセロトニンの分泌量を増やそうと、セロトニンの原料である必須アミノ酸のトリプトファン(たんぱく質)をはじめ、たんぱく質のエネルギー代謝をサポートするビタミンB6などの栄養素を欲します。その結果、食欲増加につながると考えられます。

太りにくく、食べすぎない食事の工夫を習慣化

 秋に食べすぎないためには、セロトニンを分泌するように日中、散歩へ行くなど日に当たる習慣を意識するのもひとつです。食事面では、栄養バランスの良い食事をよく噛んでいただくことが有効ですが、取り入れやすい3つの習慣についてお伝えします。

その1 食べる順番を工夫する

 食物繊維を含むものを先に食べると、血糖値をゆるやかに上げて太りにくくなるといわれています。食事をすると血糖値が上昇し、下げるためにすい臓から「インスリン」が分泌されますが、同時にインスリンは血糖を脂肪に変えて、体内に貯めてしまいます。インスリンの大量分泌は体脂肪の蓄積を促進するのです。

 そこで、糖の吸収をゆるやかにする食物繊維を多く含む野菜を先にとることが有効だといわれています。その後で、ごはんなど糖質を含む炭水化物を食べるようにしましょう。食物繊維は、満腹感を得やすいので食べすぎも防げます。

 たとえば、主食、主菜、副菜とあったら、野菜、キノコ、海藻料理などの副菜は、食物繊維が多く含まれているので最初に食べてから、主菜や主食を食べます。イモ類も副菜に分類されますが、炭水化物が主成分になるため、最初には食べないほうが良いでしょう。

その2 たんぱく質の摂取を意識する

 基礎代謝を高め、脂肪を燃焼しやすくするために、筋肉は重要です。筋肉づくりに欠かせないたんぱく質は摂りだめできないことから、3度の食事でバランスよく摂ることが大切です。

 また、たんぱく質は糖質に比べ消化がゆっくりのため、満腹感が長続きし、間食や過食を防ぎます。美容と健康のために積極的に摂取したい栄養素です。

 たとえば、肉や魚、卵、大豆製品です。カロリーを抑えたい人は、豚肉や牛肉よりも鶏肉を、豚肉や牛肉であれば脂質の少ないヒレやモモ、ランプなどの赤身肉を選びましょう。魚の場合は、赤身魚よりも白身魚を。タラやカレイ、ヒラメなどがおすすめです。かまぼこや魚肉ソーセージなどを摂り入れても良いでしょう。

 大豆製品には、納豆、豆腐、油揚げ、がんもどきなどがあります。油揚げやがんもどきは油抜きをしていただきましょう。これら大豆製品の植物性は、肉や魚、卵の動物性に比べると栄養価は同等でありながら低エネルギーです。

 たんぱく質は、動物性、植物性と偏らずに、両方摂ることをおすすめします。同時に摂取することは効率的に体内に吸収され、血中たんぱく質濃度を長く保ち、筋肉の合成を活性化するとの報告もされています。ただし、筋肉づくりには適度な運動も欠かせないので、たんぱく質の摂取とともに心がけてください。

その3 夜遅くに食べない

 夜間は代謝が落ちるので、夜遅くに食事をすると消化が悪く、胃腸に負担がかかります。食べたものがエネルギーとして消費されないため脂肪が蓄積しやすくなります。夕食は寝る2〜3時間前に済ませましょう。また、夜遅くに食べると睡眠の質が悪くなり、ホルモンバランスが崩れて食欲増加につながる負のスパイラルに陥ることもあります。

 夜遅くに小腹が空くこともあるかもしれません。そんな秋の夜長には、カップ1杯のホットミルクがおすすめです。牛乳は、たんぱく質とカルシウムを豊富に含むので、睡眠中に行われる骨や筋肉の形成にも役立ちます。また安眠効果があるといわれています。

 まずは3つの習慣を取り入れて、食欲の秋を上手においしく乗り切りましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾