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秋サバがおいしい理由 皮は食べたほうがいい? 栄養を逃さないコツを聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

おいしいサバの塩焼き(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
おいしいサバの塩焼き(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 サバは、日本の食卓で古くから親しまれてきた魚のひとつです。通年出回っていますが、秋に水揚げされるサバは「秋サバ」と呼ばれ、おいしさが増すといわれています。それはいったい、なぜなのでしょうか? 秋サバについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

越冬のために脂肪を蓄える時期

 日本沿岸ではマサバとゴマサバがとれますが、サバというと一般的にマサバのことを指します。マサバは、春から夏にかけて産卵しながら北上し、秋になると越冬や産卵準備のために南下する回遊魚です。漁獲地域で違いはありますが、この秋の時期に水揚げされるマサバを「秋サバ」といいます。

 秋サバの最大の特徴は、脂の乗りです。秋サバは冬に備えて栄養を蓄えようとするので、「秋の荒食い」といわれるように、積極的にエサを食べるようになります。しっかり栄養をとり、脂肪を蓄え、大きいものは50センチを超えることも。通常は16%程度とされる脂の含有量が、秋サバは20%以上になることもあるといわれています。

 栄養をたっぷりとった秋サバは、脂肪が豊富なため肉質が良く、旨味と甘さがあります。この脂の乗りが良いことで、ほかの季節のサバよりもおいしさが際立つのでしょう。

サバの優れた栄養成分とは

 サバの脂肪は、不飽和脂肪酸が多く良質な脂質です。なかでもオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)は血液をサラサラにして、血栓予防や動脈硬化の予防に、DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳の活性化などの効果も期待できます。たくさん脂肪を蓄える秋サバは、健康的な食品としての魅力もあるでしょう。

 さらに、筋肉など体作りに欠かせないたんぱく質、カルシウムの吸収率をアップさせて骨や歯を丈夫にするビタミンDが多く含まれています。また、赤血球の材料になり全身に酸素を運ぶ役割がある鉄、味覚や生殖の健康に関係する亜鉛など、ミネラルも豊富。子どもから高齢者まで、あらゆる年代が摂取しておきたい食品のひとつです。

 サバは皮にも栄養があり、ビタミンB2を豊富に含むといわれています。ビタミンB2は、皮膚や髪などの細胞の再生や成長を促進するため、「発育のビタミン」とも。また、三大栄養のなかでも脂質をエネルギーに変える際に必要な補酵素で、健康の維持に欠かせません。とくに、サバの背の中央から尾にかけての皮に多く含まれるといわれています。苦手でなければ、皮ははがさず食べたほうが栄養メリットもあるでしょう。

新鮮な秋サバを見極める4つのポイント

 切り身ではなく丸ごと1尾買うために、新鮮なものを見極めるポイントを押さえておきましょう。

・黒目の周りが透明で澄んでいる
・口の先と尾の付け根が黄色かオレンジ色をしている
・皮にシワがなく、胴体にハリがある
・腹部は銀白色でふっくらつややか

 サバは傷みやすいので、買ってきたらすぐ内臓を取り除き、冷蔵保存しましょう。血がある場合、生臭さの原因になるので十分に水で洗い流してキッチンペーパーで水気を拭き取り、切り身にしたものをひとつずつラップで包んで冷蔵保存します。購入したその日のうちに、調理して食べることをおすすめします。

 サバはシンプルな塩焼きがおいしいですが、脂が網からしたたり落ちることも。また、揚げ物にすると脂が揚げ油に流出してします。EPAやDHAを逃さず摂取したいなら、煮汁も一緒に食べられる煮つけや、汁ごと食べられる鍋やスープにするほうが効率的です。生臭さが気になったら、ショウガやみそを使うと良いですよ。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾