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7年ぶりに受けた人間ドック 予期せぬがん告知を受けた57歳男性 定期健診の重要性を痛感

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

予期せぬ腎臓がんの告知 ステージは「Ia」

 無知な素人が「腎臓嚢胞」をネット検索すれば、多くは「通常は治療を要しない」と出てきます。「たいしたことないだろう」と気楽に考えていたのですが、MRI検査の結果はというと……。

「見逃しがちなサイズで好判断でした。これはがんですね。嚢胞内に腫瘍ができるケースは日本人の約90%が悪性。ほかに治療方法はありませんので切除しましょう」

 少し意外だったのは、拍子抜けするほど簡単ながん告知だったことでした。家族や知人にがん経験者はいますし、もっと重苦しいイメージがあったからです。ただ、冷静に受け止められたのは、嚢胞の大きさが3センチ程度で、がんの進行度合いを示すステージも「Ia」という最も初期だったこと、治療の見通しが立つからこそ簡単に告知したのだろうと想像できたこと。年齢的にがんに罹患しても不思議はないと思えたから、ショックもありませんでした。

 のちに担当医師に「がん告知はもっと深刻かとイメージしていました」と打ち明けました。すると「もちろんカウンセラーをつけたりすることもあります。我々は年間に何例も見ているとはいえ、患者さんには人生で1度あるかないかのこと、もっと配慮しないといけませんね。反省点です」とおっしゃり、かえってこちらが恐縮したくらいです。

長年の不摂生 過信せずに定期的な検査を

 健康など考えもしない食生活や、朝まで酒を飲み、睡眠不足でも仕事に追われた20代~40代の生活ぶりは、とても褒められたものではありません。仕方なく会社の健康診断こそ受けてはいましたが、初めての人間ドックも45歳を過ぎてからで、毎年受診していたわけではありません。「協力隊」の3年間も、簡易な健康診断だけでした。

「自分は大丈夫」という根拠のない過信で強がるものの、どこかに不具合を指摘されるのが怖かったのかもしれません。

 もし今春の人間ドックを「面倒くさい」と逃げていたら……。

 腎臓がんは初期であれば、自覚症状はほぼありません。幸い、見つかったがんは術後の病理検査で、嚢胞の中にとどまっていたことがわかりました。ただ、放置すれば大きくなり、やがてほかに浸潤する可能性は高まります。医師の説明では腎臓がんは肺や脳、骨に転移するケースが多いとのことで、取り返しのつかない状況になっていたかもしれません。

 タイミングだけで受診した人間ドック。通常ならスルーされてしまいそうな嚢胞を医師の判断で検査したもらえたことなど運もあったと思います。若い頃とは違い、勢いだけでは乗り切れない年齢です。やはりきちんと定期的に検査を受けることが重要だと改めて気づかされました。

(芳賀 宏)

芳賀 宏(はが・ひろし)

千葉県出身。都内の大学卒業後、1991年に産経新聞社へ入社。産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジなど社内の媒体を渡り歩き、オウム真理教事件や警視庁捜査一課などの事件取材をはじめ、プロ野球、サッカー、ラグビーなどスポーツ取材に長く従事。2019年、28年間務めた産経新聞社を早期退職。プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)で広報を担当したのち、2021年5月から「地域おこし協力隊」として長野県立科町に移住した。