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失敗しても再チャレンジできる ハワイの私立小学校お受験事情 日本人ママが“落とし穴”と感じたこととは
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アメリカ・ハワイのロコ(地元民)と結婚し、現地で2人の子どもを育てている45歳・主婦ライターのi-know(いのう)さん。小学2年生の7歳男児(通称・ロコ男)と、飛び級でキンダーガーデンに進級した5歳女児(通称・ロコ美)の育児経験を通して感じた日米の違いを、このコラムで紹介します。第17回は「お受験に合格しても、安心できない私立校の落とし穴」です。
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ハワイの学費はとても高価 助成金制度を利用する人が多数
前回、オバマ元大統領が卒業したハワイのエリート校、プナホウ・スクールについて書きましたが、今回はその続き。見事、3~5倍の倍率を突破し、プナホウ・スクールに合格した親&子どもを待ち受ける、次なる試練についてお話します。
プナホウ・スクールはキンダーガーデンから高校まで一律の授業料で、年間3万1689ドル(約485万円)。基本的に、リッチな家庭の子どもしか入れません。しかし、ハワイには「Financial Aid(ファイナンシャル・エイド)」という制度があり、家庭の世帯収入やシングル家庭などさまざまな状況に応じて、経済的な支援が行われます。小学校だけでいうと、これは日本にはない制度ですよね。
プナホウ・スクールの発表によると、助成金がもらえる家庭は生徒全体の22%。平均して、1家庭につき年間1万2500ドル(約193万円)の助成金が支給されているとのこと。
結構もらえる! と思われるかもしれませんが、これには中学・高校の成績優秀者や、スポーツのトップ選手だけに与えられる“学費免除”のケースが含まれています。ちなみに、女子ゴルフ界で活躍したハワイ出身のミシェル・ウィー選手はプナホウ・スクール出身です。
勉強やスポーツで飛び抜けるのが年齢的に難しい、小学校低学年の子どもがいる家庭は、助成金の対象にならないことも多いようです。知人はプナホウ・スクールに子どもが合格したものの、助成金がもらえないと分かった時点で入学を辞退していました。
何度も入試のチャンスがある一方で…入学後も成績や素行に注意が必要
ちなみに、私が驚いた日本とハワイのお受験で大きく異なることは……。
1. 多くのトップ私立校が、小学4年に上がる外部生に対して編入試験を実施していること
2. キンダーガーデンの試験で不合格でも、成績上位者から順番にウェイトリストに入ることができて、空きが出れば再試験を受けられること
日本の常識から考えると、何度もチャンスを与えてくれる良い制度だと思われるかもしれません。でも、これには“私立校の落とし穴”ともいえる事情が隠されています。
アメリカ人は良い条件の仕事を見つけて即転職、別の州に引っ越す家庭が珍しくありません。そのため、日本の私立校と比べると空きが出やすい傾向があります。
しかし、理由はそれだけではありません。子どもの成績が悪かったり素行が悪かったりすると、“肩叩き”のような圧力が加わり、退学に追いやられるそうです。そこで欠員を補充するために、小学4年生の入学前に入学試験を実施したり、不合格でもウェイトリストに入ることができたりするのでしょう。
実は中学受験への意識も高いハワイ 決定権は親に
ロコ男が通う公立小には、小学2、3年になると、近所の私立校から転校してくる生徒がいます。その私立校はトップ校ではありませんが、勉強面でとても厳しいと耳にしました。
そして、中学受験が熱いのは日本だけでなく、ハワイも。ロコ男は公立小学校に通っているので、私の周りは公立小ママが多いのですが、3年生ぐらいになると「中学校どうする?」という会話が増えます。
ハワイの小学校は基本的に5年生が最終学年です。残された2~3年で、学校見学や情報収集をして公立中に進むのか、私立中に進むのか。子どもの意志に関係なく親がジャッジするケースがほとんどでしょう。
というのも、日本の中学受験は子どもの努力が大きいのに対し、ハワイは親の経済力がものをいう世界なので、学校選びに関しては親が決定権を持ちます。トップエリート校に子どもを入れたい一心で、コネクション作りや寄付金などに尽力する人も少なくありません。
ハワイの学校教育と聞くと、ゆるそうなイメージがあるかもしれませんが、日本とさほど変わらない受験戦争が勃発しているのが、悲しいかな、ハワイの現実です。
※1ドル=約153円(11月11日現在)
(i-know)