食
めでたい席のタイのおかしら 漢字で書くと「御頭」は間違い 縁起を担ぐようになった理由も
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
もうすぐお正月。お祝いの席にタイを用意している人もいるでしょう。とくにタイのおかしらつきは、昔から縁起物として重宝されてきましたが、それはなぜなのでしょうか。また「おかしら」に込められた意味とは? タイの豆知識ついて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
◇ ◇ ◇
タイが縁起の良い魚といわれる理由
日本では古くから縁起の良い魚として、タイを神事やお祝いの席で振る舞ってきました。マダイ、クロダイ、チダイ、キダイなど、日本近海には十数種類のタイ類が生息しています。めでたい席での「タイ」といえば、「マダイ」のことです。
縁起が良いとされる理由のひとつは、「鯛」という名が語呂合わせで「目出度い(めでたい)」に通じることにあります。また、タイの美しい体色や姿にも理由があるとも。タイの赤い色は太陽を連想させ、祝い事に欠かせない色とされました。
そして、頑丈で大きな頭部や眼、鋭いヒレと硬い大きなウロコなどを持つタイは、焼いても形が崩れにくい特徴があります。そのことから、めでたい席にふさわしい魚として珍重されたようです。
おかしらは「御頭」ではなく「尾頭」
お正月などのめでたい席に、タイがおかしらつきで出されることが多いでしょう。「おかしら」は「お頭」や「御頭」ではなく、「尾頭」を意味します。頭から尾まですべてそろっているという縁起を担いでいるのです。
タイのおかしらのどちらかが切れていたり、壊れたりしたものは縁起が悪いといわれます。とくに、お祝いの席に「腹を切ったもの」は切腹を連想させることからタブーとされ、内臓をエラブタから取り出すのが一般的です。
塩焼きなどにする際、皮が破れにくくなるよう表面の皮に十字の切り込みを入れますが、祝いの席に並ぶタイのおかしらつきではそれも「傷」や「割れ」となり、忌み嫌われることがあります。タイの頭を左側にした状態で裏側に切り込みを入れて、表から見えないようにしましょう。
お祝いの象徴タイ その栄養をとろう
祝いの席を彩るタイは、縁起の良さだけでなく、栄養価の高さでも注目されています。低脂肪で高たんぱく質な白身魚で、疲労回復のアスパラギン酸が豊富です。また、脳の活性化に良いといわれるDHA(ドコサヘキサエン酸)や、血液をサラサラにして血栓防止に期待できるEPA(エイコサペンタエン酸)のオメガ3脂肪酸なども、サバなどの青魚よりは劣りますが多く含まれています。
タイが祝い事に欠かせない理由のひとつである赤色は、アスタキサンチンによるもの。タイが、アスタキサンチンが豊富なエビやカニをエサとするためです。アスタキサンチンには強い抗酸化作用があり、老化防止や生活習慣病予防が期待できます。近年は化粧品にも使われている成分です。
淡泊な味わいながら、旨味成分となるイノシン酸をはじめグルタミン酸もたっぷりと含まれています。塩焼きはもちろん、刺身でも楽しみたいところです。また、タイのアラ、頭や骨を煮出して作る「タイの潮汁」も、祝い膳の締めくくりとして欠かせない料理でしょう。
新年の健康と幸運を願って、栄養豊富なタイをぜひ味わってほしいと思います。飲みすぎや食べすぎで疲れた体をサポートしてくれるでしょう。
(Hint-Pot編集部)