どうぶつ
長寿化するいぬねこ 「飼育困難」の相談が年間200件以上 老犬老猫ホームの実態とは
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まずは「飼い主に寄り添う」 そして面会を気軽に
帝さんは、「老犬老猫ホームに預けるのに、無責任な理由なんてほぼない」と話します。誰もがみんな最後まで看取れると思って飼い始めますが、やむを得ず飼えなくなる事態に突然陥ることもあります。
飼えなくなってしまった時、まず思いつくのは、身内に引き取ってもらうこと。自分の親や息子・娘さん達に預けられたら、またいつでも会えるし口出しだってできます。けれど、実際頼まれる側にとっては急に言われてもなかなか難しいもの……。
身内がダメなら里親に……そう思っても、いぬやねこが10歳過ぎている場合、マッチングするのはこれまたかなり厳しいといいます。そして、そこでようやく「あ、もしかしてこの子は生きていけないかもしれない……」と気づく人が多いのだそう。
「じゃあどうしよう……」と、身内総動員で、何か救済措置はないのかと必死に調べて、やっと出てくるのが老犬老猫ホームなのだそう。どうしてもやむを得ない事情とはいえ、飼い主はだいたい自分のことをまず責めてしまうといいます。「我が子なのに飼えなくなるなんて、無責任」と。
「そんな飼い主さんに精一杯の共感を示し、想いを受け止めて、ワンちゃんねこちゃん達のお世話に反映させるということが、老犬老猫ホームには絶対に必要だと考えています」
老犬老猫ホームは、飼えなくなったときに仕方がなく選ぶ手段ではなく、「今よりもっと幸せになるための手段」になるべきだと思うという帝さん。
「スタッフにはいつも、いぬやねこと仲良くなる以上に、まずは面会などを通じ『飼い主さんと仲良くなってください』と言っています。そうすると、飼い主さんご自身の不満ややるせなさなどの気持ちがだんだんと消化されていくんですね」
スタッフはもちろんいぬやねこが大好きな人ばかり。だから、スタッフにとって動物達の入居は嬉しいことかもしれませんが、飼い主にとっては断腸の想いであることをしっかり理解し、サービス業の精神も絶対忘れないように指導を行っているのだとか。
「飼い主さんそれぞれにこれまで育ててきた思い入れやプライドがります。それをしっかり受け止めて飼い主さんに成り代わることができるか。そこにマイペースさや自己流は許されないと思っています。これがボランティアとの大きな違いですね」
東京ペットホームは、入居後も愛犬、愛猫との面会ができます。帝さんの妻まいこさんは、積極的に利用者さんとも会話をするようにしており、面会だけでなく、ホームに来てコミュニケーションをとること自体が楽しいと感じてもらえる施設を目指しているという。
「ホームでわんちゃんやねこちゃんが亡くなったときに、これからはうちの妻に会えなくなることもかなり寂しいとか、そういうふうに言っていただけるだけで嬉しいですね」
帝さんが考える老犬老猫ホームのあるべき姿とは、「預かっているいぬやねこと同じくらい、飼い主さんとも家族のような存在になること」なのだそうです。
取材協力:東京ペットホーム 公式サイト:http://www.tokyo-cathome.com/
(猫ねこ部)