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キャベツの不作は水やりをすればいいのでは?→農家「間違ってはいないです」 素朴な疑問に対する厳しい現実とは
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キャベツの価格高騰が止まりません。昨夏の猛暑や秋の天候不順による不作が原因とされていますが、雨が降らないのであれば水やりをすればいいのでは? と考える人も多いでしょう。しかし、それでは解決しない理由を説明するポストがX(ツイッター)で注目を集めています。投稿者で、「株式会社うちの子も夢中です」の代表取締役・大塚一貴さんに詳しいお話を伺いました。
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「水をまく=キャベツが育つでは必ずしもない」
スーパーマーケットの青果売り場を見てみると、キャベツが1玉500円以上するなど、あまりの高値に驚いてしまう状況が続いています。農林水産省が15日に発表した「食品価格動向調査(野菜)」によると、6日~8日の全国平均小売価格は平年比の362%と、約3.3倍に。
また、同省は「主産県において、8月から9月の高温、10月の天候不順の影響による歩留まりの低下に加え、12月の低温、干ばつの影響により小玉傾向」になっていると説明。1月下旬に向けて出荷数量の回復が見込まれているものの、この高値はまだしばらく続きそうです。
雨量が足りないのであれば、水やりなどで解決できるのでは? と疑問に思う人もいるでしょう。毎年約8万株のキャベツを島根県奥出雲町で生産している大塚さんは、「水をまく=キャベツが育つでは必ずしもない」といいます。
1700坪の土地に対し、毎分450リットル散水しても間に合わない
大塚さんは自身のnote「うちの子も夢中です」で、その理由を詳しく解説しました。それによると、農家も散水機などを使用し、天候に抗うように水をまいています。しかし、日照り続きで地面の底に水がなくなると、毛細管現象で地表までがすべてカラカラに乾燥。この状態になってしまっては、いくら散水しても水が浸透せず、地表で蒸発してしまうそうです。
大塚さんの農場では、1700坪の土地に対し15基の散水機を使用。1分間に450リットルもの水をまいていますが、それでも地表で蒸発してしまい、根が張る位置まで水を届けることがなかなかできません。Xのポストで「せいぜい死なないように雨まで生かすぐらいで、やはり健全生育のためには雨がないときついのが現実です」と、その難しさを綴っています。
さらに、キャベツは適切な時期に十分な水が行き渡らないと、あとから大きくなることができないという、生育の過程についても紹介。小さい玉にしか育たないことで「1つの畑から採れるキャベツの総キロ数が少なくなるため、市場からキャベツの絶対数が足りなくなったりします」と説明しています。今回の異常事態を見れば、昨夏からの天候不順の影響がいかに大きかったかが実感できるでしょう。