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「それは捨てられない」「もらい泣きです」 古い電話機の留守電に残された亡き母の声 録音のプロになって息子が気付いた母の「気遣い」
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断捨離のため処分しようと思った古い電話機、そこには亡き母の“思い出”が残っていました。ふと留守電を再生してみて、よみがえった20年前の母の声。SNSで報告すると、「涙が止まらない」と多くの感動を呼びました。録音・音響のプロが見つけた母の生きた証し、声を巡る家族の物語についてお話を伺いました。
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27年前に両親から持たされた家財道具
「断捨離で使わなくなった電話機を捨てようと思って、ふと留守電に何か残してなかったかと思い再生したら、亡くなった母の20年前くらいの声が残っていた。なぜか捨てられなくなってしまった……」
X(ツイッター)に投稿したのは、録音技師やMAミキサーとして活躍するC3PROJECT代表のmiDumoさん(@miDumo)です。
電話機は27年前のもので、「私が大学進学で一人暮らしを始める際に、両親から持たされた家財道具の一つです」。家族の記念品でもありました。
スマートフォンが普及するなど時代の変化と共に、電話機の出番は減っていきました。この電話機もそうで、現在の家に引っ越してからは自宅の固定電話はつないであるだけで使用することはなく、20年以上放置していたそうです。
昨年の夏頃には模様替えの際に取り外し、押入れで保管するように。今年に入って、miDumoさんが家のモノを整理するため片付けていたところ、“奇跡の物語”が動き始めます。
「親の声が録音されていたのを思い出して、消したかどうかは覚えていなかったのでふと気になって再生してみました。電話機も年代物で劣化しているため、電源入れて10分ほどは再起動を繰り返したり、再生音もノイズまみれでしたが、次第に正常動作するようになり7件目に入っていた母の声を聞くことができました」。幸運にも再生が実現できたのです。
miDumoさんの母が他界したのは、2023年のこと。「私自身の連絡不精と親不孝もいろいろと重なったことで、私には全くの寝耳に水の報となりました。最後の見送りをできないまま荼毘(だび)に伏され、葬儀なども終えた後に急逝したとの連絡を受けました。整理のつかないままの母の訃報を受けたこともあって、死に目に会えないことのモヤモヤが未だに残っていました」と打ち明けてくれました。
残されていた母の声はどんなものだったのでしょうか。
「留守電に残っていたメッセージは、私が仕事に追われてややうつ気味で連絡を絶ってしまいがちだったころに、連絡がとれない私を心配するメッセージでした」とmiDumoさん。最愛の息子への母の思いが、しっかりと記録されていました。
投稿は20万件を超える“いいね”、約1.2万件のリポストを集め、大きな反響に。「20年前の声が残っていたなんて、奇跡みたいですね。私もなんだか胸が熱くなりました」「これは間違いなく宝物というのです」「感情移入して涙が止まらない」「それは捨てられない」「物に魂が宿る ですかね。素敵なお話ありがとう」「もらい泣きです」「わかります。スマホに亡くなった父の声が残っていて泣いてしまいましたもん」など、感動の声が続々。
また、留守電に残された故人の家族の声に関する体験談、共感の声もたくさん寄せられています。
さらに、電話機の製造メーカーであるSHARP(シャープ株式会社)の公式Xからは「長らくご愛用いただきありがとうございました」と感謝のメッセージも届きました。