カルチャー
増え続けるインバウンド客 都内最大の観光地・浅草の試み 官民一体での「生活と調和した観光振興」とは
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2024年の訪日外客数は3686万9900人で、年間過去最高を更新しました。日本政府は、2030年に訪日客6000万人の観光立国を目指すと掲げています。一方で、京都や富士山などの日本を代表する観光地では、公共交通機関の混雑やゴミ問題、地域トラブルなど課題が山積みです。そんななか、東京で最大の観光地のひとつ、浅草を有する台東区では、住民生活と観光事業を調和させるための試みをスタート。区の観光課に話を伺いました。
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都内有数の観光地・台東区 課題はゴミ問題
都内でも有数の観光地が数多くある台東区。浅草をはじめ下町風情の残る谷中エリア、アメ横商店街のある御徒町、上野恩賜公園や上野動物園などは、広く知られているスポットです。さらに、今年は台東区が大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の舞台にもなり、外国人観光客だけでなく、日本人からも注目が集まるエリアとなっています。
台東区によると、2023年に区を訪れた国内外からの観光客数は3862万人。区の人口が約21.6万人なので、人口の約180倍もの人たちを受け入れたことになります。今後も増加が予想される観光客の受け入れをスムーズにするために、台東区では昨年3月~5月、浅草エリアにおいてアンケート調査を実施。実際に観光地で生活を営む住民や事業者目線で、どのような課題を感じているかをヒアリングしました。
調査結果と分析で見えてきたことについて、区の観光課係長の藏内はるひさんは次のように語ります。
「一番大きなものはゴミでした。あとは公衆トイレや公衆喫煙所に関するマナーや、情報発信が不足しているという点、また混雑が与えるさまざまな影響についてのご意見がありました」
観光マナー啓発などの取り組みをスタート

そこで台東区は、観光マナー啓発や理解促進を目的とした新たな取り組みをスタートしました。
大きな問題となっていたゴミについては、「持ち帰り用ゴミ袋」と「観光マナーリーフレット」を浅草地域の観光案内所や宿泊施設などで配布。観光客による“ポイ捨て”行為を防ぐための啓発を行っています。
さらに、昨年12月と今年1月には「清走中」というゲーム感覚でゴミ拾いをするイベントを開催。ゴミ拾い中、SNSアプリに通知されるミッションに挑戦し、クリアに応じて付与されるポイントで景品獲得ができる仕組みが大反響を呼びます。事前に参加者を募集したところ100名を大きく超え、抽選制になったほどでした。
「イベント中に、地元の方々から『ありがとうございます』と声をかけてもらったという参加者の方がいらっしゃいました。また、地元の方々からも『こういうのを引き続きやってほしい』というようなお言葉をいただきました」
参加者は楽しみながらゴミ問題への理解を深めたり、地元住民と交流したりしたそう。浅草地区の美化にもつながり、初めての試みではありつつも、台東区は手応えを感じているようです。
今後は浅草地区の路上などに投棄されたゴミの現状を調査し、ゴミの多い場所や量、組成を明確にすることで、ポイ捨てによるゴミ対策の基礎資料となるよう分析を行う予定だといいます。