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増え続けるインバウンド客 都内最大の観光地・浅草の試み 官民一体での「生活と調和した観光振興」とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

外国人観光客が困りがちなトイレや喫煙所の場所 周知ツールを展開

デジタルマップへ簡単にアクセスできる二次元コードがついたスタンド【写真:Hint-Pot編集部】
デジタルマップへ簡単にアクセスできる二次元コードがついたスタンド【写真:Hint-Pot編集部】

 また、ゴミに次ぐ課題として挙がっていた公衆トイレや公衆喫煙所に関するマナーです。情報発信の不足については、場所を探すことができるデジタルマップの公開に工夫をしています。デジタルマップは台東区公式観光情報サイト上で見られますが、初めて訪れる観光客が区のサイトからデジタルマップを能動的に発見するのは難しいとの実態を把握。そこで、簡単にアクセスできるよう二次元コードが印刷されたポスターやミニスタンドなどを、浅草エリアの事業者の協力のもと、店頭や観光案内所などに広く展開しました。日本語のほか、英語、中国語、韓国語も表記されています。

「地域の方からお話があったのが着想のきっかけです。たとえば、外国人の方からトイレや喫煙所の場所を聞かれると、みなさん優しいのでお店をやってらっしゃるときでも席をはずして案内されることが。でも、そうすると商売が止まってしまいます。そんなときにこのようなツールがあると、『これを見て』と言うことであっという間に解決できるんです」

 浅草エリアの住民は、事業者でもあることが少なくありません。その人たちのニーズに応えられることが、サステイナブルな観光地作りにつながっていくのです。

「区民生活と調和した観光振興」を目指す

 2024年の訪日外客数は年間過去最高を更新し、旅行消費額が初めて8兆円を超えました。日本政府は2030年に6000万人の訪日観光客数、旅行消費額を15兆円と掲げています。

 ますます増えていく観光客を、台東区はどのように受け入れ、呼び込んでいく構想を練っているのでしょうか。聞くと、意外な答えが返ってきました。

「区として掲げているのは、区民生活と調和した観光振興です。滞在時間を長くしていただく、1人あたりの消費額単価を伸ばしていく。1人あたりの消費額が増えれば、そんなに多くの数を呼び込むことには重きを置いてません」

 実は、区が行ったアンケートによると、来訪者が台東区に感じた「残念だったこと」は「人の多さ」が一番多い結果に。そのことを受け、混雑を解消し、地域も観光客も満足するバランス点を見つけることは大きな課題のひとつになっています。単に数を受け入れるのではなく、質を上げた観光振興にシフトしていく必要性を考えているようです。

 日本屈指の観光スポットを有する台東区は、オーバーツーリズムの防止、観光客の分散化、区民の生活向上を意識した観光基盤作りなど、地域住民や事業者と協働し、持続可能な観光地の実現を目指しています。

(Hint-Pot編集部)