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おしぼりで「顔を拭く」のはマナー違反か こぼした食べ物をふいてもいい? 意外に知らない手を拭き終わったあとの正しい扱い方

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

食事前に出されるおしぼり(写真はイメージ)【写真:写真AC】
食事前に出されるおしぼり(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 飲食店で、食事をする前に提供されるおしぼり。とくにタオル地のおしぼりは拭き心地が良く、ホカホカとした温かさが、冷えた手に癒やしを与えてくれますよね。おしぼりで顔を拭くことは賛否が分かれますが、それ以外にも意外に知られていないマナー違反があります。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

おしぼりを使う際に最も気をつけたいこと

 日本の布おしぼり(以下おしぼり)の起源には、諸説あります。疫病の流行や高温多湿の気候、清潔好きな気質などが背景として考えられますが、明確なルーツはわかっていません。「おしぼり」と呼ばれるようになったのは、室町~江戸時代に、旅人たちが宿屋の玄関先に用意された手ぬぐいを桶の水で絞って、汚れた手や足を拭って疲れを癒やしたことに由来しているといわれています。

 現代では主に、飲食店で食事前に提供されることが多いです。季節によって温めたり、冷やしたりされていて、なかには顔を拭く人もいるかもしれません。マナー違反かどうかがよく話題になりますが、リフレッシュするという点では顔を拭いてかまわないとする見解もあります。

 しかし、手を拭くことを目的に提供されているおしぼりで顔を拭くのは、周囲の人に不快感を与える場合もあるかもしれません。「周囲を気遣う行為がマナー」という観点からいえば、同席者や周囲に人がいるときは控えたほうが良いでしょう。

 おしぼりのマナーとして最も気をつけたいのは、テーブルなど物を拭くことです。台拭きではないため、食事をこぼしてテーブルが汚れてしまった際は、おしぼりで拭かずに店のスタッフに声をかけるなどして、テーブルを拭いてもらいましょう。

 タオル地のおしぼりのほとんどは業者からレンタルされているもので、返却後に再利用できるように洗浄、衛生管理されています。ソースやしょうゆなど、落ちにくい汚れをおしぼりで拭いてしまうと再利用が難しくなることがあるので、手を拭くこと以外では使わないようにしたいですね。

押さえておきたいおしぼりのマナーとは

 日本料理店などで食事前に出されるおしぼりは、手を清めるためのものです。おしぼりを受け取ったらすぐに広げて、手を丁寧に拭きます。袋に入ったおしぼりの場合は、袋の先端を破って引き出してから使いましょう。袋は邪魔にならないよう、テーブルの上に置いておきます。

 手を拭き終わったら、拭いた面を内側にしておしぼりをたたみましょう。トレーがあればトレーの上に、なければテーブルの上に、またはおしぼりが入っていた袋の上に置きます。袋入りのおしぼりは、袋の中に戻しません。

 食事中に指先が汚れてしまった場合は、おしぼりの内側の面でそっと拭きましょう。口元が汚れても、おしぼりで拭くとマナー違反になります。備え付けのナプキンなどを利用しましょう。

 食事が終わってもう使わないからと、おしぼりを食べ終わった皿に置くのはご法度です。使い終わったおしぼりでも、軽くたたんでトレーや袋の上に戻しましょう。

 おしぼりは、訪日外国人から称賛される日本独自の文化のひとつ。正しいマナーを押さえておきたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾