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二番や三番もあるの? 吹かない年や地域があるのはなぜ? 「春一番」について気象庁に聞いた
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天気予報で「春一番が吹きました」と聞くと、春がすぐそこに来ている気がします。ただ、「春一番」と認められる基準や名前の由来など、意外に知らないことが多いかもしれません。そこで、気象や予報に関する用語の解説などを行っている、気象庁の天気相談所にお話を伺いました。
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吹かない年や「春一番」がないエリアも
――気象庁から発表される「春一番」とは、どういうものなのでしょうか。
「『春一番』は、冬から春への移行期に初めて吹く、暖かい南寄りの強い風のことです。地域によって異なる点もありますが、基準が定義されています。まず共通するのは時期で、2月4日頃の立春から3月21日頃の春分までの間。
気象条件としては、日本海側の低気圧の影響による強風で、風向は南、風の強さは風速7~10メートル以上であること。気温が前日より高い、あるいは平年より高いといった点が挙げられます」
――年によっては、発表がないときもあります。また、北海道や東北、沖縄県では「春一番」の発表がないそうですが、なぜですか?
「定義に当てはまる風が吹かない年は、発表がありません。たとえば、ほかの条件を満たしていても時期を過ぎてしまったケース。体感的には『強い南風だな』と思っても、風速が基準を満たしていないなどです。
発表がない地域については、北海道や東北ですと4月頃まで春が来ない。立春から春分は、まだ冬の天候です。一方で沖縄県は、すでに春になっています。発表自体の要望がないこともありますが、この期間に『春一番』の定義を満たさないエリアで、気象条件的に“なじまない”というのも理由のひとつですね」
――素朴な疑問として「春一番」に対して、「春二番」や「春三番」はあるのでしょうか。
「あってもおかしくはないですね。ただ、気象庁としての定義はないため、解析や情報をまとめることはありません。強風として記録に残る可能性はあっても、二番や三番という番号がつくわけではないです」
江戸時代に起きた海難事故が由来の説
――気象庁で「春一番」の発表をするようになったのは、いつ頃からですか? また、発表をするようになった背景を教えてください。
「発表を始めたのは1970年代からですが、明確な時期や発表するようになった経緯などは不明です」
――言葉としての「春一番」の由来は?
「言葉の由来は、諸説あるようです。気象庁で把握しているのは、江戸時代の1859年。長崎県五島沖で出漁した漁師の多くが遭難しました。そのときの原因となった強風を、『春一番』と呼ぶようになったというものです」
――防災の観点から、「春一番」に注意すべきポイントはあるのでしょうか。
「『春一番』自体に直接、関連した形での防災上の注意はありません。ただ、『春一番』に限らず強い風として、強風注意報などの気象情報を発表しています。
言葉の由来のような、海上の時化による海難事故。ほかにも交通機関の乱れ、農作物への影響など、強風にはさまざまな注意が必要です。警報や注意報を確認して、風への備えをしてもらえればと思います」
言葉としては優しく、やわらかなイメージですが、実際は気をつけなければならない強風の側面を持つ「春一番」。そうしたギャップも感じつつ、今年の発表に注目したいですね。
(Hint-Pot編集部)