仕事・人生
「人を幸せにできるのはケーキ」 パリの一つ星レストランでオーナーを務める日本人女性 異国の地で成功を掴むまで
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海外で活躍する日本人女性は、年々増えています。フランス・パリでパティスリー(フランス菓子作り)の修業を積んだ杉山あゆみさんもそのひとり。現在、パリのミシュラン一つ星レストランを経営しながら、デザート作りも担っています。異国の地でパティシエール(女性菓子職人)として、そしてレストランオーナーとして、いかに道を切り開いていったのか、杉山さんのサクセスストーリーを語っていただきました。
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スイーツは苦手、でも作るのは楽しい
実は、子どもの頃から甘いものが苦手という杉山さん。当時よく食べるお菓子といえば、おせんべいのような甘くないものでした。ケーキやあんこなどの甘いお菓子が好きではなかった母親の影響で、家庭内で食べる機会がなかったからかもしれないと笑います。
パティシエールになってからも、スイーツを食べることはありません。そんな杉山さんがお菓子職人になることを決めたのは、なんと幼稚園生のときでした。
「ショーケースに並んでいるケーキがかわいい、まるで夢の世界。まず見た目に引かれていたのかと思います。将来はパン屋さんかケーキ屋さんになろうと決めていました」
父親は靴専門店を営み、母は週に3日ほど夜勤のある仕事。カギっ子だったので、食事を自分で作ることも多かったそうです。
「料理は楽しかったです。小さな頃から手で何か作り出すことが好きで、泥団子みたいなものをよく作っていました。この頃からこねることが好きだったんですね(笑)」
ケーキは誰かを幸せにできる
高校生になり、進路を迷っていた杉山さんは、父親のお客様だったパン店の見学に行く機会を得ました。
「そこではパンとケーキを売っていたのですが、パンを選んでいるときと、ケーキを選んでるときのお客様の顔が違うんです。ケーキを選ぶときは笑顔で幸せそうに見える。ケーキを買うのは90%が誰かのため。だから、より多くの人を幸せにできるのはケーキのほうだと感動しました」
それがパティシエールを目指した理由でした。この道に進むと決めてから、学校が休みのときは近所のケーキ店で研修することにしました。お菓子作りにかける並々ならぬ情熱を感じます。
故郷で就職 技術から心がまえまで学ぶ
高校卒業とともに、生まれ育った静岡を離れ、東京にある製菓の専門学校「エコール 辻 東京」へ。卒業後、東京で仕事を探したものの思い描くような仕事とは縁がなく、静岡に戻り、清水市にある洋菓子店「ラ・ローザンヌ」に就職しました。
「このお店で働いたことで、多くのことを学べた」と振り返る杉山さん。お菓子作りの技術はもちろん、接客の心がまえやビジネスなど、何から何まで叩き込まれたそうです。
「もともと和菓子店だった店を息子さんが洋菓子店にしたのですが、窯やはかりなど、使っている道具はすべて先代からの昔ながらのもの。アナログな道具を毎日使っていたおかげで、材料を目分量で量れるようになったことは今も役立っています」