Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

「人を幸せにできるのはケーキ」 パリの一つ星レストランでオーナーを務める日本人女性 異国の地で成功を掴むまで

公開日:  /  更新日:

著者:Miki D'Angelo Yamashita

ケーキ作りを極めるためにパリへ

 そんな毎日を送るなか、どうしても本場フランスで技術を極めたいという気持ちが募ります。たまたま兄がイタリアで建築の勉強をしていたこともあり、20歳のときに自分も海外で学ぶことを決意しました。

 学生ビザを取得し、念願のパリで語学学校へ通い始めますが、フランス人とのコンタクトがまるでありません。4か月後には、高校生のときに研修させてもらったケーキ店の息子さんが昔いたというパティスリーで働き始めました。

 しかし、そこでは言語の壁もあり、しばらくして店を移ることに。職人もお客様もフランス人しかいない、地元の人が来るような昔ながらのブーランジェリー(ベーカリー)で働き始めました。フランスを知るには理想的な環境だったそうです。

「フランス人が日常食べているのはどんなものか、知りたかったんです。定年間近の2人の職人さんがパンを焼いていたのですが、朝6時くらいからパンを焼き始め、9時になるとポルト酒(ポートワイン)を飲んで、お昼にかけてケーキを作りつつ、お酒がパスティス(アニスの香りが特徴のフランスのリキュール)に変わる。いかにもフランス人らしい仕事ぶりを目の当たりにし、フランスの日常にどっぶり浸りました」

 外国だからといって、杉山さんがカルチャーショックを受けることはありませんでした。日本であろうとフランスであろうと変わりなく、どこにでもすぐなじむので、ストレスは感じない性格。客観的にフランス人を観察できたようです。

 こうして半年ほど充実した生活を送っていましたが、店主が定年で店を閉めてしまい、それと同時に帰国することになります。機会があればフランスに戻りたいと思い続けて1年。パリに戻る機会を得ました。2度目のパリでは、自分のレストランを持ち、一つ星まで獲得します。

 次回は、杉山さんがどのように夢を叶えていったのか、奮闘記をお届けします。

(Miki D’Angelo Yamashita)

Miki D’Angelo Yamashita

コロンビア大学大学院国際政治学修士、パリ政治学院欧州政治学修士。新聞社にて、新聞記者、雑誌編集記者、書籍編集として勤務。外信部、ニューヨーク支局、パリ支局、文化部、書籍編集部、週刊誌にて、国際情勢、文化一般を取材執筆。