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くしゃみで「誰かに噂されている」というのはなぜ? 回数によって違う意味も くしゃみにまつわる言い伝えとは

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

突然出るくしゃみ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
突然出るくしゃみ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 風邪や花粉症などで止まらなくなるくしゃみ。そもそも、なぜ「くしゃみ」と呼ぶのでしょうか。また、古くから「くしゃみをすると誰かに噂されている」といわれますが、その理由とは? 日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回はくしゃみにまつわる言い伝えについてです。

 ◇ ◇ ◇

くしゃみは不吉なものだった…語源は「呪い返し」の言葉?

 古くは、くしゃみをすると「鼻から魂が抜けて早死にする」と信じられていました。風邪で亡くなることも多かったので、前触れであるくしゃみは不吉ととらえられていたようです。そのため、くしゃみをすると「くさめ、くさめ」と延命のおまじないを唱える習わしがありました。この「くさめ」が、いつしかその行為自体を指すようになり、「くしゃみ」に転じたといわれています。

「くさめ」の語源には、悪いことから逃れるために陰陽師が唱える呪文「休息万命急々如律令」の「休息万命(くそくまんみょう)」が縮まって「くさめ」となった説や、「くそくらえ」の語源である呪い返しの「くそはめ」が転じたとの説があります。

 とくに、小さな子どもがくしゃみをしたときは、傍らの大人が呪い返しでののしる言葉を唱えてあげる風習がありました。地域によって違いがあり、今でもくしゃみのあと「クソッ」とか「ちくしょう」といった言葉を耳にすることがあるのは、その名残なのかもしれません。

 ちなみに英語圏では、くしゃみをした人に「God bless you!(神の祝福あれ)」と声をかけるのが一般的です。「魂が抜けて悪魔に入り込まれないように……」という願いが込められているといわれています。

くしゃみは「誰かのせい」で出されるものという迷信

 突然出るくしゃみは、「何か良くないものの仕業」や「誰かの思いや力によって出されるもの」などと考えられていました。自分では抑えられないので、誰かのせいにすることで、その場がうまく収まるという配慮も背景にあるといわれています。しだいに、くしゃみが出るのは「誰かが噂をしているから」ととらえられるようになり、くしゃみの回数で噂の内容が良かったり、悪かったりする迷信が生まれました。

 くしゃみの回数にかかわることわざに「一謗り、二笑い、三惚れ、四風邪(いちそしり、にわらい、さんほれ、しかぜ)」があります。くしゃみ1回は悪口を言われている、2回は笑われている、3回は惚れられている、4回は風邪の前触れという意味です。ほかに「一に褒められ、二に憎まれ、三に惚れられ、四に風邪をひく」もあり、1回で褒められ、2回で憎まれ、と解釈が異なりますが、いずれも科学的根拠はありません。

くしゃみは鼻の粘膜についた異物を出す生理反応

 一般的に、くしゃみが出る理由は、鼻から入ったウイルスや細菌、ゴミなどの異物が肺に入るのを防ぐための生理反応といわれています。鼻の粘膜に異物がついたときに、粘膜の神経から呼吸に使われる筋肉に伝わり、伝達を受けた筋肉が動き、強く息を吐き出して異物を外に出そうとするのがくしゃみです。

 不吉とされてきましたが、くしゃみは体を守るための大切な働きです。かなりの威力で出るものなので、くしゃみを止めようと「鼻つまみ」や「息止め」をすると、気道や耳に負担がかかるリスクがあるといわれています。

 とくにこれからの季節、花粉症などでくしゃみが頻発することも考えられます。マスクの着用や室内の換気、空気清浄機の活用などの対策を取り入れて、うまくつきあっていきたいですね。

(鶴丸 和子)