食
「甘いものが無性に食べたい」 3つの理由とは 食べすぎを防ぐ方法を栄養士に聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実

無性に甘いものが食べたくなるときはありませんか。とくに女性の場合、生理前または更年期になって、甘いものが止まらなくなった経験のある人がいるかもしれません。なぜでしょうか? 理由や食べすぎのリスク、対策などについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
◇ ◇ ◇
甘いものを欲する3つの理由
無性に甘いものが食べたくなる理由は、主に次の3つが考えられます。
○疲労やエネルギー不足
長時間の労働や運動が続いたり、食事を抜いたり軽食で済ませたりした場合、エネルギーが不足してしまいます。脳は、ブドウ糖をエネルギー源とするため、不足すると判断力や集中力の低下、疲労を感じやすくなり、エネルギーを補給するよう指令を出します。そこで迅速にエネルギーに変わる糖質を主成分とする甘いものなどが食べたくなるのです。
○栄養失調
栄養が偏った食生活が続き、エネルギーの元になる3つの栄養素、たんぱく質、炭水化物、脂質が不足していることが考えられます。体がエネルギー効率の良い糖質を欲しがり、甘いものが食べたくなるのです。また、血糖値を安定させるマグネシウムやクロムが不足すると、体が糖質を欲し、甘いものに頼ろうとする傾向があります。
○食欲増進ホルモンの増加
ストレスなどが続くと、エネルギー消費量が増え、人の体は「エネルギーを蓄える」ことを優先します。食欲を抑えるホルモン「レプチン」の働きを低下させ、食欲を増進させるホルモンである「コルチゾール」や「グレリン」の分泌を増やすのです。この結果、素早くエネルギーに変わる甘いものへの欲求が強まります。
甘いものが止まらなくなるのは脳が関係
甘いものを摂取すると脳内で「セロトニン」や「ドーパミン」などの“幸せホルモン”が分泌され、一時的にリラックス感や幸福感が得られます。この仕組みを脳が「ストレスを和らげる手段」として記憶するため、甘いものを食べることが習慣化し、結果的に止まらなくなることがあります。
とくに女性の場合、月経前に「セロトニン」分泌が減少し、気分が不安定になりやすいため、甘いものを求める欲求が高まる人が多いようです。また、イライラや落ち込みなど、気分が揺らぎやすい更年期世代が甘いものを欲するのも、一時的にリラックスを得るために脳が体に指令を出していることが考えられるでしょう。
甘いものを食べすぎないようにするには
砂糖を含む甘いものをたくさん食べると、血糖値が急上昇し、その後急降下する「血糖値スパイク」が起こりやすくなります。この状態は生活習慣病のリスクを高める原因になるため、注意が必要です。
砂糖など体内に吸収されやすい糖質は、インスリンの分泌を促し、余分なエネルギーを脂肪として蓄積します。さらに、インスリンの働きで血糖値が急激に下がると、体は疲労感を感じやすくなり、再びエネルギー源として甘いものを欲することに。このサイクルが続くと、食べすぎにつながりやすくなります。
対策としては、ストレスを発散するための趣味や軽い運動、質の良い睡眠、バランスの良い食生活などを心がけることが重要です。そのうえで、菓子や嗜好飲料など甘いものは、1日200キロカロリー程度を目安にしましょう。
甘いものが欲しくなったときは、果物やイモ類はいかがでしょうか。食物繊維やビタミン、ミネラルなどが摂れるのでおすすめです。リンゴやバナナ、サツマイモ、ジャガイモなど自然の甘さをゆっくり味わってみましょう。また、ヨーグルトはたんぱく質やカルシウムが摂取できます。甘くはないですが、ナッツ類は腹持ちが良い良質な脂質が含まれるためおすすめです。ミネラルやビタミンも含まれています。
甘いものがすべて「悪」ではありません。どうしても甘いものが食べたくなった場合、我慢するとストレスとなりかえって良くない場合があります。心の栄養として上手に付き合っていくことも大切です。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾