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ホウレンソウを生食すると尿路結石になる? 気になる疑問と正しい下処理の方法を管理栄養士に聞いた

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著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

シュウ酸を含むホウレンソウ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
シュウ酸を含むホウレンソウ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 緑黄色野菜の代表格であるホウレンソウ。ビタミンCや鉄分など、豊富な栄養素を含む野菜ですが、ネット上では下処理の方法について注意喚起をする投稿が話題となっています。適切な下処理を行わなかった場合、体にはどのような影響が出る可能性があるのでしょうか。おいしく安心して食べる方法を、管理栄養士に話を聞きました。

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ビタミンCや鉄分など、豊富な栄養素を含む緑黄色野菜の代表格

 ホウレンソウを調理する際、洗うだけでなく湯通しをするよう注意を呼び掛ける投稿が1月下旬、SNSで大きな話題になりました。そこで注目を集めたのが、ホウレンソウの葉や茎、根に含まれるシュウ酸の成分です。シュウ酸の摂取により尿路結石のリスクが高まることが指摘され、「やばい…気を付けなくては…」「昨日洗わずに電子レンジでチンして食べちゃいました」など、さまざまな反応が寄せられています。

「ホウレンソウに含まれるシュウ酸は、尿路結石のリスクを高めたり、鉄分やカルシウムの吸収を阻害し栄養バランスに影響を与えたりすることがあります。さらに、口腔内の違和感や胃腸の不調を引き起こす場合もあるでしょう」と語るのは、愛知・豊田市のたいや内科クリニックで管理栄養士を務める林安津美さん。個人差はあるものの、適切な下処理をしていないホウレンソウを食べ続けることには、さまざまなリスクがあるといいます。

「とくに高齢者が、シュウ酸の多く含まれる食品を継続的に、大量に摂取することには注意が必要です。腎機能や胃腸機能が低下していることが多いため、尿路結石のリスク要因の一つとなります。また、加齢などによって骨密度が低下しやすいため、カルシウムの吸収阻害により骨粗しょう症につながる可能性もあります」

 また、妊娠中の女性も注意すべき点があると、林さんはいいます。

「妊娠中の女性はカルシウムや鉄の必要量が増加しますが、シュウ酸がこれらの吸収を阻害する可能性があります。ただし、妊娠中は腸管での吸収効率が通常よりも高まるため、過度に心配する必要はありません。適切な栄養管理を行い、シュウ酸の影響を減らすために、カルシウムやビタミンCを含む食品を意識して摂ることが大切です」

ホウレンソウを処理する際に気をつけたい4つのポイント

 栄養豊富なホウレンソウ、おいしく安心して食べるためにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか。林さんは「しっかりと水で洗う」「根を切り落とす」「あく抜きのための下ゆで」「調理前の保管」の4つのポイントを挙げます。

「洗う際、葉の部分は一見きれいでも、実は意外と汚れています。1束を2~3回に分け、きちんとふり洗いをしましょう。一度で済まそうとすると、汚れが残ってしまいがちなのでご注意ください。また、根元の固い部分を切り落とすときには、近くの赤い部分は栄養価が高いため、完全に切り落とさず、軽く整える程度にしましょう」

 何よりも欠かせないというのが、調理前のあく抜き。下ゆでをすることで、口内の違和感や胃腸への負担も簡単に軽減できるといいます。

「アクの成分であるシュウ酸は水溶性のため、ゆでると簡単に除去することができます。沸騰した湯に塩を少し加え、茎の部分から先に入れて短時間(約30秒~1分)ゆで、全体をサッと加熱した後に冷水に取りましょう。ゆですぎると栄養素が流出するため、短時間で済ませることがコツです。冷水に取った後はしっかりと水気を切り、ゆでた後はすぐに使用するか、冷蔵保存する場合は早めに食べ切ってください」

 すぐに使用しない場合は、ペーパータオルで包むなどして、適度な水分量を保たせた状態で保存することを推奨。その際、ペーパータオルは過度に湿らせてはいけないといいます。鮮度が落ちやすいため、冷蔵保存の場合も2~3日以内に調理するのがベター。長期間保存する場合は水気を軽く絞って小分けにし、1か月程度で冷凍保存するのがおすすめだそうです。

 ホウレンソウと一緒に食べることで、シュウ酸の吸収を抑え、鉄分などの栄養素の吸収を促進できる食材があります。シュウ酸の影響を軽減するためには、乳製品や小魚、大豆製品などのカルシウムを多く含む食材が効果的。カルシウムと結びつくことで、シュウ酸の体内への吸収が抑えられます。

 また、ピーマンやイチゴなどビタミンCを多く含む食材は、特に植物性の鉄(非ヘム鉄)の吸収を促進するため、鉄分の補給に役立ちます。さらに、たんぱく質や油を含む食材と組み合わせることで、栄養のバランスを高め、体への吸収を助ける効果が期待できます。

「ホウレンソウとしらすのゴマ和えや、ホウレンソウとトマトのソテー、ホウレンソウとブロッコリーのマヨネーズ和えといった料理がおすすめです。また、ホウレンソウと卵の炒め物やホウレンソウと鮭のホイル焼きはたんぱく質を、ホウレンソウのバターソテーや、ごま油を使ったナムルは、油を効果的に摂取することができます」

 どうしてもホウレンソウを生で食べたいという場合には「シュウ酸の少ない葉だけにするか、品種改良によりシュウ酸が少なく生食可能なサラダ用ホウレンソウを選ぶといいでしょう」。どんな食材であっても、適切な処理を怠ったり、大量に摂取したりすると健康に影響を及ぼす可能性があります。適切な調理を心がけながら、おいしく旬の野菜を楽しみたいですね。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)