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「ウクライナでは考えられない」 日本で就職活動をしたウクライナ人女性 仰天した日本のシステムとは

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

現在は八千代エンジニヤリング株式会社で働くウクライナ人のエリザベータさんの大学生時代【写真:エリザベータ】
現在は八千代エンジニヤリング株式会社で働くウクライナ人のエリザベータさんの大学生時代【写真:エリザベータ】

 日本への留学を希望する外国人留学生は増加の一途をたどっています。文部科学省が行った調査によると、2023年5月1日時点での日本における外国人留学生は約28万人。ウクライナから留学生として来日し、日本でキャンパスライフを送った、八千代エンジニヤリング株式会社のエリザベータさんに、日本の大学や就職活動で驚いたことをお聞きしました。

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「出席すること」が大切? 日本の大学に疑問

 エリザベータさんは来日前、ウクライナ国立キーウ大学の日本語学科で学んでいました。しかし、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、大学4年生のときに、福岡県にある日本経済大学へ留学することに。

 日本の大学へ通い始めてまず驚いたのは、「出席すること」が大事という文化だったといいます。

「何より驚いたのは、大学の先生が成績をつける際に重要視することが、勉強の成果ではなく『出席』だったこと。ウクライナの大学では、授業をサボったとしても知識を身につけ、テストなどで成果を出すことができれば問題ありません。ですが、日本では出席率が指定されるなど、『出席することに』に意義があるように感じました」

 その一方で、自分の進路や興味にあった授業を自身で選択することができる、日本の大学の制度にとても感心したといいます。

「学科にもよるのかもしれませんが、ウクライナでは自分で授業を選ぶことができませんでした。決められた授業に出て、学ぶのが一般的なんです。日本の選択方式はとてもポジティブで、素晴らしいと思います」

3年から就活が始まるなんて「聞いてない!?」

日本経済大学に留学したエリザベータさん【写真:エリザベータ】
日本経済大学に留学したエリザベータさん【写真:エリザベータ】

 1年間の留学生活のなかで、とくに注力したのが「就職活動」でした。戦争が終わったとき、復興の一助になれるよう日本での就職を希望していたエリザベータさんですが、大きな壁が立ちはだかります。

 それは、日本の「新卒一括採用」。日本では情報解禁が3月、面接解禁が6月――というように経団連により学生の就活に関する指針が決められています。そのため、企業の新卒採用活動が活発化する“就活シーズン”は絞られてきます。

「ウクライナでは考えられないですね。実際、3年生のときは就活について何も考えていませんでした」

 ウクライナはジョブ型雇用のため、日本のように一斉に就活がスタートすることはありません。一年中いつでも求人がある一方で、新卒であっても専門性やスキルを求められる傾向にあるといいます。

「希望の職種に就くためには、社会に出る前にいろいろなセミナーやインターンシップに参加し、必要な知識を身につけようとする学生が多いです。逆に日本では、スキルよりもコミュニケーション能力や、ポテンシャルを評価するイメージがありますね」

 世界的に見ても特異な採用方式に戸惑いながらも、4年生の夏頃から就職活動を始め、何社か面接へと進んだエリザベータさん。「面接の回数」にも非常に驚きました。

「とにかく面接が多いですよね。私が現在働いている『八千代エンジニヤリング株式会社』は2度の面接でしたが、なかには4回以上面接がある企業も。しかも、数か月間にわたって合否を待たされるので、精神的に疲れるだろうなと思いました。コロナ禍だったので、オンライン面接が多かったことが救いでしょうか」