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「なぜ日本では、ベビーカーで肩身が狭い思いをしている人が多いのか」 アメリカで日本人男性が驚いた光景とは
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清々しい春が近づき、お出かけしやすい季節になりました。子どもを連れての外出は、何かと周りの目が気になりがちですが、日本とニューヨークで違いはあるのでしょうか。妻の海外赴任に伴い、ニューヨークで駐在夫、いわゆる「駐夫(ちゅうおっと)」になった編集者のユキさん。この連載では、「駐夫」としての現地での生活や、海外から見た日本の姿を紹介します。第21回は「日本とニューヨークのベビーカー事情」についてです。
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アメリカではベビーカー論争は起きない?
早いもので妻の駐在に同行してから2年以上が過ぎました。こちらに来て、目につくのがベビーカーに子どもを乗せて出かける人の多さでしょうか。
日本では、電車やバスなどの公共交通機関内や混雑する場所で、ベビーカーを押すのは、マナー違反ではないかと議論されることがあるようですが、ニューヨークでは、電車内やレストランなどあらゆる場所で、ベビーカーを見かけます。
しかも、赤ちゃんだけではなく、4、5歳くらいの十分歩けるだろう子どももベビーカーに乗せられています。
歩くことができないからというよりも、子どもがあちこちに動き回ってしまわないようにということでしょう。ベビーカーは子どものためにというより、親が大変だからという理由で使っているわけです。
ニューヨークの公共交通機関であるMTA(ニューヨーク州都市交通局)によると、バスに乗車する際には、ベビーカーをたたまなければならないことになっています。
それに対する反対の声も上がり、車内にベビーカーを置けるスペースを設けた、ベビーカーをたたまずに乗車可能なバス路線もあります。
一方で東京の公共交通機関には、ベビーカーをたたまなくてはならないというルールはありません。
国土交通省は、「電車やバスに、ベビーカーをたたまずに乗ってもよい」という見解を示しており、2人乗りのベビーカーに対しても「混雑しているなど乗車が難しい場合をのぞいて、たたまずに乗車できる」と伝えています。
それなのになぜ日本では、ベビーカーを使うときに肩身が狭い思いをしている人が多いのでしょうか。
日本人の美徳の良し悪し
これは「他人に迷惑をかけない」というのが、日本人にとっての美徳になっているからではないかと思っています。
もちろん人によるとは思いますが、周囲に配慮するということにニューヨークではあまり重きが置かれているようには思いません。
混雑した電車内に自転車を運び込むUberドライバー、音響機材を持ち込み演奏をしているミュージシャンなど。車両内での演奏は本来禁じられているわけですが、周りもあまり気にしている様子もなく、チップを渡す人も見かけます。
交差点で信号を待つ人についてもそうなのですが、自分が安全だと判断すれば赤信号でも無視して道路を横断していきます。本来、安全確認は自分のためだけではなく、周りの人のためでもあるのですが、そういった意識は希薄なのでしょう。
誰も規則に従わないからか、ニューヨークでは、2025年2月から信号無視や横断歩道のない道路を渡る行為を認める法案が成立しました。
ルールがなくても、他人に迷惑をかけないようにと気を遣う日本人。ベビーカーについては、それが悪い方向に出ているのかもしれません。
ときどき息苦しく感じるかもしれませんが、日本の秩序正しさというのはこういう意識から来ているところもあると思うので、なかなか難しいなと感じています。
(ユキ)