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漫画

「『字が読める』って意外とまれな能力」 日本人が長い海外生活で感じた理由に共感殺到 「日本を当たり前と思ってたら、世界ではまったく通用しない」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

「たとえばエジプトでは、『話し言葉』と『書き言葉』が違います」

 ジャスティンさんに、詳しいお話を伺いました。

Q. 今回の作品を描いたきっかけは?
「普段から文字の読めない人と接する機会が多く、このような漫画を描くに至りました」

Q. 「文字を読めない人が多い」と感じた国を教えてください。
「多くの国で感じましたが、国ごとに事情が複雑に異なる印象でした。たとえばエジプトでは、使われている『話し言葉』と『書き言葉』が違います。話し言葉は『アンミーヤ』、書き言葉は『フスハー』と呼ばれ、どちらもアラビア語ではありますが、単語や文法の組み立て方がかなり違うのです。多くの人は、自分が話す言語を字で書くことができませんし、書き言葉も理解できません。

 ウイグル自治区では、漢族、ウイグル族、カザフ族、キルギス族などの人が入り乱れていました。ウイグル語は読めても漢字は読めないなど、人や家庭により事情が異なっています。ただ、若い人のなかには、すべてが完璧に読める人もいました。

 アフリカでは表記法が確立されていない言語も多く、1つの国で言語数が50以上もあったりします。母語は話すだけ、読むときは英語などの公用語を使うという国も多くあります。多くの人が『英語ちょっと読めるけど、あまりよくわからない』という状態です」

Q. 文字が読めない人が、メールなどのやりとりで内容を理解できなかった場合、電話など別の対応をすることはありますか?
「ほとんどないかと思います。日常的にわからないものをスルーする毎日なので、私を含め、わからないものをすべて理解しようと努める人は、あまり多くないように思います。基本的に、既読がついても返事が来なければ、伝わっていないと考えます」

「『なんかよくわからない』が『怖い』という感情に発展すると…」

誤情報でQRコードをおそれた、ウイグル自治区の人たち【画像提供:オカリナ講師のジャスティン(@Justin_ocarina)さん】
誤情報でQRコードをおそれた、ウイグル自治区の人たち【画像提供:オカリナ講師のジャスティン(@Justin_ocarina)さん】

Q. 作中のウイグル自治区でのQRコードのエピソードは、いつ頃のことですか?
「10年くらい前の話です。あるとき、多くのアパートのドアにQRコードが一斉に貼られたため、なんだろうと話題になったようです。『なんかよくわからない』が『怖い』という感情に発展すると、なぜか人は『それは悪いものだ』という情報だけを信じやすくなるそうです。これはどの国でも起き得ることですが、文字情報から遮断されていると、なおのこと起こりやすくなってしまいます。正しい情報の大切さを痛感しました」

Q. 作中で、コミュニケーションで工夫していることを描いていました。そのきっかけは?
「言語が入り混じる環境にいると、誤解やミスがよく生じます。また、私も苦労して英語を学んだので、『英語を学んでいる途中の人にとって、何がわかりにくいか』ということがわかります。そこを思い出すようにしながら話すと、アフリカでもコミュニケーションがうまくいくようになったんです。それで、いろいろ工夫するようになりました。今でも、相手に話が伝わってなかったことは多くありますが、工夫しだいでかなり良くなると感じています」

 言語の違いだけではない“言葉の壁”。相手の状況を思いやり、適切な方法で伝える――コミュニケーションの基本を考えさせられますね。

(Hint-Pot編集部)