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意思表示できずに不要な支払いも… 元添乗員が教える海外でのコミュニケーション術
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夏休みを利用して久しぶりの海外を楽しんできた人や、これから海外旅行の計画を立てる人も多いでしょう。最近は国内旅行に慣れてしまい、その感覚のまま海外に行くと、「あれ? 海外旅行ってこうだったっけ……?」と思う人もいるのではないでしょうか。世界約50か国以上を旅した元添乗員で、旅アドバイザー&トラベルライターのAnaさんによるこの連載。今回は、海外でぜひ実践したいコミュニケーションのマナーについてです。
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イエスorノー、意見ははっきりと! 曖昧な対応はトラブルのもと
日本人は良くも悪くも「イエス/ノー」を言う、白黒の判断をつけることに慣れていません。回答をグレーにする、自分の意見を主張するより周りの意見やその場の状況を考えてから自分の意見を言う傾向があります。英語は、イエスかノーかをはっきりと言いますし、まず話の結論を先に言うタイプの言語です。一方、日本語は最後まで結論を先延ばしにできる、言語的な表現の特性もあると思います。
そのため日本人は、レストラン、観光地などで質問をされたときにはっきりと「いる・いらない」「私はこっちを選びます」と言えないことが多いのです。私が添乗員をしていたときも、「本当はいらなかったのに……」「私はこっちのつもりだったけど、違う……でももう言えない」「いらないコーヒーを持ってこられて、お金を取られた」「本当はこっちのチケットが欲しかったのに、別の入場券を買う羽目になった……」「待ってる人がたくさんいて、気まずくて言えなかった」など、お客様は本当に謙虚な方ばかりでした。
添乗員付きのツアーに参加されるのは「海外が初めて」「英語が話せなくて不安」など、海外に慣れていない方が多かったので、最初に必ず「海外に来たら、自己主張ははっきりと」とお伝えしていました。ちょっと強気に出るくらいでちょうどいいのです。
はっきりとした意思表示がしないことは、こちらの要望が通らないというデメリットはもちろんですが、現地の人にとっても困ること。現地のガイドさんたちも、「基本的に日本のお客様はとても優しくて穏やかで大好きなだけど、何を考えているのかわかりづらい」「はっきりノーと言ってくれたら、ちゃんと変更したのに」「さっきは何も言わなかったのに、後から違ったと言われても困る」と、日本人ならではの難しさを感じるとよく言われたものでした。
これらは、相手の気持ちをおもんぱかる思いやり、その場の空気を壊さないといった優しさの表れ。日本らしい考え方のひとつなので、決して悪いことではなく、日本らしい個性で、良い面だとも思うのです。ただ、海外に行ったらそれは通用しない、と知っておくことは大事ではないかと感じます。
「あいさつ」は日本人が思っている以上に重要
「なんで日本の人はお店に入るときに黙ってるの? 怒っているの?」。これはフランスの現地人に言われたことです。シャイだと思われるだけならいいのですが、不機嫌に見えているのかと少し残念な気持ちになりました。とくに欧米圏では、第一声のあいさつがものすごく大事。あいさつの優先度や重要性は、恐らく日本人が考えている以上で、大切なコミュニケーションだと思います。
日本であれば、コンビニエンスストアに入るとき、店員さんに「こんにちは!」と言う人はほとんどいません。私たちにとっては、店に黙って入る/出ていくのは当たり前のことです。
ただ、海外は違います。何も買わなくとも、まず目が合ったらあいさつ。店に入るとき、店員さんと目が合ったとき、レストランでオーダーするとき、受付などでチケットを買うとき、どんなときもまずはあいさつです。それがあるだけで、その後の相手の対応がずいぶん変わります。
「あまりにも言いすぎて、帰国後も間違って『ボンジュール(フランス語でこんにちは)』と言ってしまうくらいでもいいです!」と冗談まじりに言っていましたが、それほど染み込ませないと自然とは出てこないものです。