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「約81万人がトイレを使えなくなる」 専門家が災害時の備えの盲点を力説 知っておきたい簡易トイレの作り方

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:小林 裕

トイレが使えなくなった際に必要になる簡易トイレ(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
トイレが使えなくなった際に必要になる簡易トイレ(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 災害時、水が止まればトイレも使えなくなります。そんなときに命や健康を守るのが、簡易トイレの備えです。実は過去の震災でも、トイレ環境の悪化が関連死を招いたケースは少なくありません。そこで災害に備え、自宅にあるもので簡易トイレを作る方法や、あると役立つ素材について、防災士の小林裕さんに詳しいお話を伺いました。

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防災士が力説する「『自宅で排泄環境を確保すること』の重要性」

 地震のほか、これからの季節に増える台風などの豪雨被害では、断水や下水管損傷が起き、水洗トイレが機能しなくなるおそれがあります。小林さんは「水や食料だけでなく“トイレ対策”も、災害への備えや在宅避難の柱です」と話します。

 過去の災害でも、トイレの問題が深刻な影響を及ぼしてきました。

「阪神・淡路大震災では、遠い仮設トイレを避け、水分を控えた高齢者の持病悪化などが、震災関連死を増やしました。熊本地震でも、関連死は直接死の約4倍です。東京都の試算では、首都直下地震発生2時間で約81万7000人がトイレを使えなくなるといったシミュレーションが。こうしたデータは、『自宅で排泄環境を確保すること』の重要性を示しています」と、小林さんは強調します。

「目安は、1人あたり1日5回×7日分=35回分」

 都市部では避難所の定員超過が想定され、自宅の安全性が確保できている場合には、在宅避難が推奨されるエリアが多いといいます。また、仮設トイレ自体も不足が予想されるほか、夜間は照明が乏しくなる可能性から、小林さんは「高齢者や子どもにとっては、避難所トイレへの移動そのものが負担になることもあります」と説明。

 なじみの環境で過ごせることや、生活動線がわかっていることで夜間のトイレ移動も比較的安全に行えることなど、自宅避難にはさまざまな利点があると指摘しました。

 その一方で、自宅避難のためには事前の十分な準備が重要です。では、市販の家庭用簡易トイレは、どれくらいの量を備える必要があるのでしょうか。

 小林さんは、「目安は、1人あたり1日5回×7日分=35回分です」と説明。家族の人数に応じた量を用意しましょう。また、トイレットペーパーはもちろん、ビニール手袋や除菌シート、消臭剤もセットで備蓄しておくと安心です。