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「約81万人がトイレを使えなくなる」 専門家が災害時の備えの盲点を力説 知っておきたい簡易トイレの作り方

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:小林 裕

「ペットシートなどは吸水量と防臭力が高く、処理回数を減らせる」

 もしも、市販の簡易トイレの備蓄が足りなかった場合は、自宅にあるもので応急的に簡易トイレを作ることが可能だと小林さんは話します。

「基本は、便器に大きなゴミ袋をかぶせ、中に吸収性の高い素材を入れるという方法です。防災士の教本でも、『おむつやペットシートを袋の中に入れる』やり方が紹介されています。ペットシートは吸水性や消臭性に優れており、非常に効果的な代用品になります」

【簡易トイレの作り方】(基本の手順)
1. 便器に45リットル以上の厚手ポリ袋をかぶせる
2. 袋の底にペットシート(または紙おむつ)を敷く
3. 排泄後、袋の空気を抜きながらしっかりと結ぶ
4. フタ付きのバケツやポリ容器などで一時保管する

 小林さんは、「ペットシートなどは吸水量と防臭力が高く、処理回数を減らせるのが利点です。また、消臭スプレーや除菌シートを併用すると衛生的だと思います」と説明します。

 なお、ペットシートや紙おむつなどの大手メーカーに、こうした目的外使用について質問したところ、「想定や検証をしておらず、エビデンスがないので回答は難しい。ただ、吸水性能や防臭などに、一定の有用性はあるとは思います」との答えでした。

 そのうえで、「たとえば紙おむつの場合、仮に使う素材がほぼ同じだとしても、ペット用と人間用、赤ちゃん用と大人用といった違いで、製品化の仕様が異なります。使うパルプや吸水ポリマーの量、設計が違うので、十分な効果が得られるとは限りません」とのこと。あくまで代用品として使う場合はその点を理解し、自身の判断で活用する必要があるといえそうです。

紙おむつやペットシートがない場合の素材

 とはいえ、どの家庭にも紙おむつやペットシートがあるとは限りません。小林さんは、そうした場合でも、代わりに使える身近な素材と使い方を教えてくれました。

○基本の手順2でペットシート(または紙おむつ)の代わりに使用できるもの
・新聞紙やチラシを細かくちぎって丸め、袋の底に敷く
・コピー用紙や雑誌のページも同様に活用が可能
・さらに、キッチンペーパーやティッシュを重ねることで吸水性を補う

 ただし、新聞紙などは固まらず臭いが出やすいため「袋を二重にして密閉してください」と注意を促します。

 さらに、吸水性や防臭性がない代替品を使う場合、生活の知恵としては「保冷剤に塩を混ぜたもの」を入れると良いそうです。一般的な家庭用の保冷剤150グラムに対し、塩を小さじ1~大さじ1くらい混ぜたものを用意。新聞紙などの上から入れます。余裕のある状況であれば、塩を混ぜたあと5分ほど置き、浮いてくる水分をキッチンペーパーなどで吸い取って除くと、吸水性がより上がるそうですが「あくまで非常時の対応なので、省いてもかまいません」とのこと。

「これは保冷剤の冷却作用と塩の吸湿・消臭性を生かした工夫で、一時保管中の臭気対策として活用できる可能性があります」と、小林さんは解説。使用後の袋はしっかり縛り、密閉できる容器やバケツに入れて保管すると衛生的だとアドバイスします。

「トイレ環境は衛生と健康、そして心の余裕にも直結します。今日できる小さな準備が、非常時の大きな安心に変わります」

 これからは台風や豪雨などによる水害の増加も懸念されます。水や食料と比べると、盲点になりがちなトイレの備え。改めて意識するとともに、しっかり準備しておきたいですね。

(Hint-Pot編集部)

小林 裕(こばやし・ゆたか)

防災士。「知っていれば」「備えていれば」避けられた被害をなくすために、防災・減災関連の情報発信、商品・サービスの開発支援を行っている。