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「昭和の話?」と話題に 「みそ汁はみそを入れたら煮立ててはダメ」な理由とは
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教えてくれた人:和漢 歩実

和食の定番のみそ汁。水分と塩分、そしてミネラルも一緒にとれることから、これからの季節は夏バテ予防にも役立ちそうです。ところで、みそ汁を作る際には「みそを入れたら沸騰させてはいけない」といわれますが、このことに関してSNSでは「それは昭和の話?」などの声も上がっています。実際はどうなのでしょうか。元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
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沸騰させると、みその香りが飛んでしまう
――みそ汁を作る際に「みそを入れたら煮立たせてはダメ」と、昭和世代の私も家や学校で教わった記憶があります。でも、そもそも煮立たせてはいけない理由は何でしょうか?
「確かに、学校の家庭科でみそ汁の作り方を学ぶ際は、昭和に限らず、そう教えられると思います。みそを入れたら煮立たせてはいけない理由は、みその香りが失われてしまうためです。みその香り成分は熱に弱く、沸騰させると香りが飛んでなくなってしまい、風味豊かな香りを楽しむおいしいみそ汁になりません」
――風味を残しておいしいみそ汁にするために、煮立たせてはいけないということなんですね。具体的には、鍋にかけた火をいつのタイミングで弱めたら良いでしょうか?
「よく誤解があるのですが、みそ汁を作るすべての工程で沸騰させてはいけないということではありません。鍋にだしを入れて火にかけたら、具材にしっかりと火を通しましょう。このときは、沸騰させて構いません。みそを入れる段階になったら、いったん火を止めてください。みそを溶かしたら、その後は、煮立たせないように軽く温める程度にします」
食中毒予防の観点から沸騰させたほうが良い?
――最近は、昭和とは違って蒸し暑さが厳しく、食中毒も気になるので、みそを入れた後もグツグツとみそ汁を沸騰させたほうが良いのではと思ってしまいます。
「みそ汁を作ってすぐに食べる場合、みそを入れる前に具材にしっかりと火が通っていれば、みそを入れた後にグツグツと沸騰させなくても、とくに問題はありません。食中毒の観点からいうと、むしろ、蒸し暑さが増すこれからの季節には、みそ汁は食べる分だけ作るようにして、作り置きはしないほうが良いですね。たとえば、朝作った豚汁を、夕食でも食べようと鍋に入れっぱなしで、コンロの上に置いたままにしておくと、その間に菌が増えてしまう恐れがあります」
――もし、作ったみそ汁を一度で食べきれない場合は、どのように保存して温めたら良いでしょうか?
「どうしても、食べ切れずに保存したい場合は、浅い容器に移して保冷材などを活用して素早く冷まし、冷蔵庫で保存しましょう。1日程度で食べ切ってください。冷蔵保存したみそ汁を温め直す際は、食中毒予防の観点から、沸騰させたほうが良いでしょう。みその香りは飛んでしまい、おいしくありません。再加熱の際にカツオ節を加えると風味が増すこともありますが、やはり、みそ汁は出来立てを食べるのがおすすめです」
――ここまでの話をまとめつつ、暑い季節にみそ汁をおいしく食べるためには、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。
「みそを入れたら煮立たせてはいけないというのは、みその風味を生かすためなので、必ずしも沸騰させたからダメだということではありません。とはいえ、みそを入れた後にグツグツ煮込むと、せっかくのおいしさが台無しになってしまいます。
食中毒が気になる場合は、そのときに食べる分だけを作るようにし、みそを入れる前にしっかりと具材に火を入れましょう。熱中症が気になるこれからの季節は、朝に1杯のみそ汁をとると、水分、塩分補給に加え、体の内側から温まり、体温の上昇も助けてくれて、1日のコンディションを整えやすくなります」
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾