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塩分が気になるならみそ汁は控えるべき? 更年期の女性が知っておきたい「高血圧予防」食事のコツとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

高血圧というと、気になるのが食事の塩分(写真はイメージ)【写真:写真AC】
高血圧というと、気になるのが食事の塩分(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 5月17日は「世界高血圧デー」。高血圧になっても、自覚症状がほとんどなく、気づかぬうちに血管に負担がかかっていることも少なくありません。とくに更年期の女性は、ホルモンバランスの変化により血管の柔軟性が失われ、血圧が上がりやすい傾向に。予防のために「塩分を控える」食生活が基本とされますが、それだけでは不十分なこともあるようです。記念日にちなみ、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに、更年期女性が気をつけたい食生活のコツを伺いました。

 ◇ ◇ ◇

女性ホルモンの低下で血圧が上がりやすい

 これまで血圧が正常だった、または低血圧だった女性も、更年期になると高血圧になる可能性があります。女性ホルモンのエストロゲンが低下することで、血管の柔軟性や働きが弱くなったり、ホルモンバランスの影響で交感神経が活発になって血圧の上昇が促進されたりして、血圧が上がりやすくなるためです。

 50歳前後に血圧が高くなると、更年期による一時的なものだと思って放置してしまいがちです。しかし、上昇と下降を繰り返す、振り幅が大きい血圧の変動は注意が必要です。別の病気のリスクが高まっているかもしれません。

 食生活からの高血圧予防というと、基本とされるのが「塩分を控える」こと。食塩をとりすぎると、私たちの体は、一時的に高くなった血中の塩分濃度を下げるために、血管内に水分を増やそうと働きます。これによって血液量が増え、血管にかかる圧力が増し、血圧が上がってしまうのです。

知らないうちに塩分をとっている傾向も

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年度版)」によると、目標とされる1日の食塩相当量は、健康な成人女性だと6.5グラム未満です。しかし、加工食品や市販の惣菜などが多いと、知らず知らずのうちに超えてしまうことがあります。

 また、味付けだけでなく、調理工程で食塩を使うこともあるでしょう。たとえば、パスタをゆでるときにコシを出すため、青菜をゆでるときに鮮やかな色を保つため、湯に食塩を加えるといったことです。

 最近は減塩タイプの食品や調味料も多くみられますが、減塩であることに安心して量を食べすぎたり、味に物足りなさを感じて使いすぎたりしてしまえば、意味がありません。塩分の代わりに、添加物がより多く含まれているものもあります。栄養成分表示をチェックして、必要に応じてうまく活用しましょう。

 味に物足りなさを感じたときは、うま味成分を生かしただし、ショウガやニンニクなどの薬味、コショウやカレー粉などの香辛料などを使うのもおすすめです。酢やレモンなどの柑橘類の絞り汁などを入れても、味に深みが出ます。

減塩だけでなく、塩分を排出する成分も意識しよう

 塩分を控えることも大切ですが、それだけでなく「余分な塩分を体の外に出す」働きを持つ栄養素を意識することも、高血圧予防には効果的。なかでも注目したいのが、カリウムと水溶性食物繊維です。

 カリウムには体内の余分な塩分を排出してくれる働きがあり、野菜や果物、海藻などに多く含まれます。塩分を気にしてみそ汁を控える人もいますが、発酵食品であるみそと、さまざまな野菜で作った具だくさんのみそ汁を飲む選択のほうが栄養メリットがあり、健康的です。

 また、食物繊維のなかでも水溶性食物繊維は、塩分の排出をサポートしてくれます。カリウムと同じように野菜や果物、海藻などに多い成分です。主食のごはんに、肉や魚、大豆製品などの主菜だけでなく、副菜もしっかりと。汁物と組み合わせた一汁二菜を心がけると良いでしょう。

 更年期の高血圧予防では、単に減塩するだけではなく、栄養バランスを意識した1日3回の食事が大切です。夕食よりも、活動量が多くエネルギーを消費しやすい日中の、朝食や昼食をしっかり取ることをおすすめします。食事以外にも、適度な運動、運動が難しければ歩くことを意識し、ストレス発散や質の良い睡眠を心がけましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾