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「1日1粒で医者いらず」の梅干し 効能が“逆効果”になってしまう、やってはいけない保存方法とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

体に良い栄養成分が詰まった梅干し(写真はイメージ)【写真:写真AC】
体に良い栄養成分が詰まった梅干し(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 梅雨の時期に旬を迎える梅の実。梅干し作りに挑戦する人もいれば、暑さが増す時期のお弁当に活用する機会が増える人もいるでしょう。梅干しは昔から「1日1粒で医者いらず」と言われるほど、健康に良い食品として親しまれてきました。ただし、保存方法によっては、梅干しの効能が“逆効果”になることもあるようです。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

酸味の主成分「クエン酸」には、さまざまな効果が

 日本人と梅との関係は古く、栄養学がまだ確立されていなかった平安時代の頃から、その効能は経験的に着目されていたようです。当時の貴族の間では、塩漬けした梅の実を「薬」として用いていたといわれています。やがて武士の兵糧として梅干しが活用され、江戸時代になると庶民に保存食として広まっていったようです。

 現代では、梅干しにはビタミンやミネラル、食物繊維、クエン酸など、体に良い栄養成分が含まれていることがわかっています。なかでも、酸味の主成分であるクエン酸は、梅干しを代表する有効成分といえるでしょう。

 クエン酸は、疲労回復や抗菌作用のほか、食欲を増進させたり、カルシウムや鉄などのミネラルの吸収をよくしたり、消化を助けるたりする働きが期待できます。腐敗や食中毒が気になる時期の献立や、体調不良で「疲れて食欲がわかない」ときの食事に、1日1粒の梅干しは心強い食材になるでしょう。

アルミニウムをとかしてしまうことも

 酸味と塩分のある梅干しだからこそ、保存方法で心がけておきたいポイントがあります。アルミホイルなどのアルミニウム製品を溶かしてしまうことがあるので注意が必要です。

 アルミニウムには、酸やアルカリと化学変化を起こして、溶けやすい性質があります。梅干しは、強い酸と塩分が混じったものです。アルミホイルなどに梅干しが長い間触れていると、少しずつアルミニウムの表面が化学変化を起こし、溶けていきます。

 たとえば、自家製の梅干しの重石と梅の間にアルミホイルを使っていたり、アルミカップなどに入れて長期間保管していたりすると、アルミが黒ずんだり、溶けて穴が開いたりすることがあります。瓶のフタがアルミ製だと、内側から溶けて、フタに穴が開いてくることもあるので、気をつけましょう。

 アルミニウムは、体内に入ってもほとんどが体外へ排出されるため、そのような状態で保存されていた梅干しを食べても健康に悪影響はないといわれています。しかし、安心して食べられるように、梅干しを保存する際には、アルミニウム製品ではないものを使用しましょう。

 梅干し以外でも、酸の強い食品や塩分濃度の高い食品の保存には気をつけてください。調理でも、酸や塩分の強いスープなどの液体料理を、アルミ製の鍋に長時間入れておくと、少しずつアルミニウムがとけて、黒ずみの原因になることがあります。

梅雨の季節に梅干しを活用しよう

 湿度や気温が上昇するこれからの季節に、梅干しはおすすめです。日々のお弁当で、食中毒予防のために、抗菌作用のある梅干しを活用している方もいるでしょう。ごはんの真ん中に日の丸のようにのせるのが一般的かもしれませんが、ごはん全体でいうとあまり効果が期待できません。

 梅干しを細かく刻んで、ごはん全体に混ぜると良いでしょう。抗菌作用が全体にいきわたり、味も酢飯のようにさっぱりとして食欲をそそります。

 古くから効能が注目されてきた梅干し。保存の方法にも気を配りながら、取り入れていきたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾