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電子レンジ調理の“落とし穴” 食中毒のリスクを回避するポイントとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

暑い季節の調理に便利な電子レンジ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
暑い季節の調理に便利な電子レンジ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 調理時に便利な電子レンジ。火を使わず、手軽に料理が作れるので、暑さが増すこれからの季節に助かります。一方で、間違ったレンジ調理で、食中毒になるリスクを高めることもあるようです。「レンチンで加熱すれば安心」と思いがちですが、実は見落としやすい“落とし穴”も。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに、気をつけるべきポイントについて伺いました。

 ◇ ◇ ◇

電子レンジ調理は均一に熱を加えるのが難しい

 ほとんどの食中毒菌は、食品の中心温度が75度で1分以上加熱すると、死滅するといわれています。となると、電子レンジで加熱して調理すれば、食中毒の問題はないと思うかもしれません。しかし、電子レンジ調理には、実は加熱ムラという“落とし穴”があります。

 電子レンジの加熱は、マイクロ波を食品に照射し、食品内部の水分を振動させることで摩擦熱が生じ、この熱が広がることで食品の温度が上がる仕組みです。ただし、このマイクロ波は、庫内でまんべんなく当たるわけではなく、均一に熱を加えるのが難しいといわれています。

 今は、電子レンジだけで作れる、簡単でおいしいレシピがたくさんあります。しかし、この加熱ムラを想定して、中心部まで熱が通るように調理しないと、半生状態の料理になってしまいます。とくに肉や魚を電子レンジ調理する場合は、食中毒が起こる可能性が高まります。

電子レンジの加熱ムラを防ぐポイント

 加熱ムラを防ぐためには、次のポイントを確認しましょう。

○庫内の汚れ
 電子レンジの庫内に汚れがあると、その汚れにマイクロ波が集中してしまい、温まり方が不均一になることがあります。汚れたまま使い続けると、温まるのにも時間がかかるように。固く絞った布巾などで、こまめに拭き取りましょう。

○耐熱容器の形
 加熱の際に使う容器も意識しましょう。マイクロ波は、容器の角に集まりやすいという特徴があります。そのため、四角い容器を使うと容器の角に当たりやすくなり、食品が均一に温まりにくい状況に。丸い容器のほうが、均一に熱が伝わります。

○食品の形
 電子レンジのマイクロ波は、食品の表面から数センチまでしか届かないといわれています。厚めの肉や魚などは、中心部分が冷たいままに。電子レンジで調理する食品は薄く、細かくするようにしましょう。冷凍チャーハンやピラフなどのごはんは、こんもりと盛るよりも、広げて温めたほうが加熱ムラが起こりにくくなります。ご自身でごはんや料理を冷凍する場合も、塊ではなく平たく、薄く伸ばし、四角よりも丸い形にしましょう。

○食品の位置
 電子レンジの種類によって、マイクロ波の当たり方が弱くなる場所があります。たとえばターンテーブルタイプなら、中心部が温まりにくい機種があるので、食品を中央に置かないようにしましょう。フラットタイプならコーナー近くにマイクロ波が当たりにくい機種があるので、中央に置いたり、加熱の途中で位置を動かしたりするなどの工夫が、加熱ムラを防ぐのに効果的です。使っている電子レンジの傾向を知っておきましょう。

粘度の高いカレーなどの再加熱は要注意

 このほか、高めの700Wで短い時間で温めるより、低めの500Wで少し長めに温めるほうが、加熱ムラを防げるといわれています。

 カレーやシチューなどの粘度の高い料理は、電子レンジで再加熱すると加熱ムラが出やすいので、基本的におすすめできません。どうしても短時間で再加熱する必要がある場合は、電子レンジで「加熱したら混ぜる」を2~3回繰り返して、加熱ムラがないように温めてください。

 電子レンジは便利ですが、まんべんなく温めるという点では、煮たり焼いたりするコンロ調理と異なる点があります。加熱ムラがないように、食品の位置をずらしたり、小さく細かく切ったり、薄く広げて加熱する工夫を忘れずに。そして、常に庫内の清潔さを保ちましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾