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「日本はもっと自信や誇りを持っていい」 パリ在住アーティストが見た伝統工芸の真価と未来
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フランス・パリを拠点に活躍し、「エルメス」などのクリエーションを手がける、世界的アーティストの河原シンスケさん。数年前から日本での住まいを京都・天橋立に構えています。日本三景に数えられる絶景や神代からの伝説などで名高い地で、地域の人々と交流を続けるなか、河原さんは、1720年頃に誕生した丹後ちりめんに代表される織物など伝統工芸が過小評価されていることに気付いたそう。インタビュー2回目は、河原さんに、地元の伝統工芸が持つ価値や未来に広がる可能性について、話を伺いました。
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当たり前ではない200年、300年と続く老舗の存在
日本では「創業300年以上」「江戸時代に創業」「14代続く」といった老舗の枕詞は珍しくありません。フランスやヨーロッパにも長い歴史や伝統を誇る老舗が多くありそうですが、「日本と比べると少ない。創業300年以上なんて、世界を探してもほとんどありませんよ」と河原さんは続けます。
「京都の人が『うちは5代目で』と言うと、府外の人は『お、5代目か』と思うけど、『お隣は10代目で』『お向かいは室町から』と続く。フランスは18世紀の革命以降から続く貴族はいても、その前はなかなかいません。家だけではなく、代々引き継がれた工芸品やスキルに対しても、日本はもっと自信や誇りを持っていいと思います」
天橋立のある京丹後は、古くから織物産業が盛んな地域。1700年代から丹後織物の技術と文化を受け継いできた職人さんが数多くいます。しかし、交流する中でこんな一幕があったとか。
「僕がエルメスの仕事をしていると聞くと、日本の職人さんたちは『シンスケさん、エルメスなんてすごいですね』と言うんです。でも、僕はいつも『皆さんの方が歴史は長いんですよ。14代目でしょ? それに比べたらエルメスは若いブランドだし、僕は1代目。それでもやっているんだから全然大丈夫です』って(笑)。もちろん、歴史があるから偉いわけではないけど、せっかく海外の人たちが素晴らしいと感じる伝統工芸や文化なのだから、卑下せずにその価値を認めてほしいですよね」
