Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

からだ・美容

「ピルを飲んだことがある人は妊娠しにくい」のは誤解 妊活中の正しい知識を専門家に聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:小松原 千暁

ピルを飲んだことがあると妊娠しにくいのは本当?(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
ピルを飲んだことがあると妊娠しにくいのは本当?(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 ピルにはさまざまな種類があり、避妊を目的に排卵をコントロールするだけでなく、月経痛やPMS(月経前症候群)の軽減などに用いられることもあります。妊活中に「ピルを飲んだことがある人は妊娠しにくい」などの情報を見聞きすることがありますが、実際はどうなのでしょうか。ピルについて、不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

ピルとは、服用中に「一時的に」妊娠を防ぐ薬

 ピルを飲んだ経験があると妊娠しにくくなるというのは、誤解です。ピルの服用経験が将来の妊娠の可能性を低下させることは、基本的にありません。

 そもそもピルとは、女性の経口避妊薬として開発された薬です。女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が配合されています。服用することでホルモンバランスが調整され、自分の卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制する作用があります。

 その結果、排卵が起こらなくなり、一時的に妊娠しない状態になります。このことから「飲んだことがあると妊娠しにくい」印象があるのかもしれませんが、事実ではありません。

 排卵が止まるのは「服用している間だけ」です。妊娠する機能そのものを失わせるわけではないため、ピルの服用をやめれば自然に排卵機能も回復します。個人差はありますが、多くの場合は服用を中止して1~3か月以内に月経や排卵が再開し、妊娠が可能です。

女性ホルモンの配合量によって種類があるピル

 ピルは、女性ホルモンの配合量で超低用量ピル、低用量ピル、中用量ピルの3種類に分けられます。いずれも医師の診察、処方が必要です。

 また、副作用として、卵胞ホルモンが原因の吐き気や乳房痛、頭痛、不正出血などが起こるといわれています。多くは飲み続けていくうちに治まっていく傾向にあります。

 それぞれの主な特徴は、次の通りです。

◯超低用量ピル
 主に、月経困難症や子宮内膜症などの治療目的で使用されます。卵胞ホルモンの含有量が少ないため、一般的に副作用が出にくいとされています。

◯低用量ピル
 避妊目的で最も広く使われているタイプです。また、月経痛やPMS(月経前症候群)の軽減など、治療目的でも処方されます。

◯中用量ピル
 子宮筋腫や子宮内膜症の治療、月経不順の改善や月経日の調整などに使われます。卵胞ホルモンの含有量が多いため、吐き気や頭痛などの副作用が出やすいといわれています。

不妊治療中に使用するケースもある

 妊活中にピルを服用するケースとして、将来的な妊娠に向けた準備の一環で、医師の判断によって用いられることがあります。たとえば月経不順の場合、月経周期やホルモンバランスを整えることを目的に、ピルの服用をすすめられることがあるでしょう。

 あるいは子宮内膜症と診断された場合、進行すると卵管閉塞や卵管采の癒着を起こして不妊の原因になることがあるため、まずは内膜症の改善のために、ピルの服用が治療の選択肢として考えられます。

 不妊治療でも、体外受精でピルを服用するケースもあります。妊娠に向けた治療なのに、ピルで排卵を止めるのは一見矛盾しているように思うかもしれませんが、採卵前後に卵巣や子宮の状態を整えるのに活用されることもあります。

「ピルを飲んだことがあるから妊娠できない」ことはありません。不安なことや気になることがあれば自己判断せず、医療施設に相談してみましょう。体の状態や治療に応じて適切に使えば、妊娠への大切な準備にもなります。

(Hint-Pot編集部)

小松原 千暁(こまつばら・ちあき)

不妊症看護認定看護師、生殖医療コーディネーター、妊活支援ナース育成コーチ、日本生殖看護学会理事。不妊治療の専門クリニックに約20年間勤務した経験より、日本の性教育に妊娠する力の妊孕性(にんようせい)に関する情報が少ないことを実感。現在は生殖医療の看護師を指導する一方で、不妊治療を受ける患者さんや若い世代に向けて、自ら選択できるように妊活の正しい知識を広める活動を行う。妊活についての情報サイト「妊活の歩み方」でお役立ち情報を発信中。