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トウモロコシがトイレで「そのまま出てくる」のはなぜ? 栄養士に聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

ゆでたトウモロコシ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ゆでたトウモロコシ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 旬のトウモロコシ。ゆでても焼いてもおいしい、夏の味わいです。そんなトウモロコシを食べた翌日、トイレでそのまま出てきて驚いた経験があるかもしれません。また、牛乳と一緒に食べるとお腹の調子が悪くなる人もいるようです。消化されにくいのでしょうか。トウモロコシについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

トウモロコシは不溶性食物繊維が多い

 トウモロコシは米と同じ炭水化物(糖質と食物繊維)ですが、食物繊維が米よりもたくさん含まれています。食物繊維には水溶性と不溶性があり、トウモロコシは、とくに不溶性食物繊維が豊富です。水に溶けず、胃や腸で水分を吸収して膨らむため、満腹感が持続したり、腸のぜん動運動を盛んにして排便を促したりする効果が期待できます。コレステロール値を下げたり、糖質の吸収をゆるやかにして血糖値の急上昇を抑えたりする働きもあります。

 この不溶性食物繊維は、人間には消化できません。トウモロコシに含まれるのは、主にセルロースと呼ばれる不溶性食物繊維で、粒の皮部分に多くあります。したがって、黄色いトウモロコシをよく噛まないで食べると、排便の際に黄色い粒がそのまま出てきたように見えるかもしれません。

 しかし実際には、粒の中身の栄養は消化されて、体に取り込まれています。トウモロコシ自体の消化が悪いよりも、粒の皮を消化できないということです。よく噛んで食べると良いでしょう。

 トウモロコシは、このような不溶性食物繊維のほか、ビタミンやミネラルが豊富な食品です。たとえばビタミン群なら、抗酸化作用が強く細胞の老化を防ぐビタミンE、糖質をエネルギーに変えて疲労回復にも役立つビタミンB1、脂質やたんぱく質の代謝をサポートし、皮膚や粘膜、髪、爪などの健康を保つビタミンB2などが挙げられます。ミネラルなら、体内の余分な塩分や水分を排出し、むくみ対策に効果的なカリウム、血液の材料になる鉄、味覚を正常に保ち、DNAやたんぱく質の合成に不可欠な亜鉛などです。

 これらの栄養素は、粒の付け根にある胚芽部分に多く含まれています。包丁などで実を落とすときは、無駄がないようにカットしましょう。

牛乳との組み合わせでお腹がゆるくなる?

 トウモロコシを牛乳と一緒に食べるとお腹の調子が悪くなるのは、個人差もありますが、2つの理由が考えられます。

 ひとつは、乳糖不耐症です。牛乳に含まれる乳糖を分解する、ラクターゼという酵素が不足していると、下痢や腹痛を起こしやすくなります。

 もうひとつは、トウモロコシの食べすぎによるものです。前述の通り、セルロースなどの不溶性食物繊維を消化できないため、食べすぎたり、よく噛まなかったりするとお腹の中で膨張して、下痢や便秘を引き起こしやすくなります。

 栄養面から考えると、トウモロコシと牛乳は良い組み合わせです。牛乳には良質なたんぱく質が含まれています。エネルギー源となる糖質を含むトウモロコシと合わせることで、筋肉や臓器などの体づくりに不可欠な栄養素を補えます。

 胃腸が弱い人は、トウモロコシをミキサーやブレンダーなどで粉砕し、牛乳と合わせてポタージュにしましょう。消化の負担を減らし、栄養メリットを得られる一品ができます。温めて食べることで、胃腸に優しい食べ物になるでしょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾