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“居場所”がない… 国籍とアイデンティティが結びつかず悩む中国籍女性が描いた漫画が反響 「“世界人”でいいよね」

著者:Hint-Pot編集部

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漫画のワンシーン【画像提供:かいし(kaixi_j)さん】
漫画のワンシーン【画像提供:かいし(kaixi_j)さん】

「今の自分が好き」 読者の感想を含めてひとつの作品が完成したと作者

 「自分を何人と思っているの」という質問に対し、多くの人は国籍とアイデンティティが強く結びついており、特に島国の日本では大半の人が「日本人」と、迷いなく答えると思います。しかし、グローバル化が進み、両親の国籍が違ういわゆる“ミックス”の人や、帰国子女、帰化した人など、さまざまな境遇の人が増えています。中国国籍でありながら、幼少期を日本過ごし、ずっと「“居場所”がない」と感じながら育ってきたという女性が、たくさんの人と交流し、自分のアイデンティティに“答え”を見つけるまでを描いた体験談をまとめた漫画が大きな反響を呼んでいます。作者に話を聞きました。

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 現在は、南米のドミニカ共和国でスペイン語の通訳やデザインの制作をしながら、ブログ「かいしさんの生活」やツイッター(@kaixij)、インスタグラム(kaixi_j)で、ラテンアメリカでの不思議な体験やカオスな日常を綴っているかいしさん。プロフィールには、「日本育ちの中国人」と自己紹介をしています。

 ところが、かいしさんは長らく自分が「何人」なのか分からず、アイデンティティを持てずにきました。日本にいるときに教師から受けた理不尽な対応や、祖国である中国に帰ってもなかなかなじむことができない自分の気持ち、そして帰国間もない頃に受けた差別やいじめから、自分は「どっちにも属していない人間」だと感じ、学生時代は「孤独で孤独でしょうがなかった」といいます。

 そんな気持ちに折り合いをつけつつ時は流れ、大人になったかいしさんは、同じく通訳の仕事をしている、アイデンティティに悩んできたという女性に出会いました。「タイリン」さんというその女性は、3か国語をネイティブレベルに使いこなし、明るくユーモアにあふれています。

 しかし、彼女もまたチリ人の父と香港系パナマ人の母の間に生まれ、複雑な経歴を持っていました。そしてある日、タイリンさんからその心のうちを明かされ、「もうさ私達「世界の人」で良くない?」と提案されます。

「世界の人」――この言葉は、これまでずっと自分の“居場所”を探し、苦しんできたかいしさんのなかにすとんと落ちてきて、胸の奥に沁み渡りました。そして、かいしさんは「うん “世界人”でいいよね」と返事をします。

 これまでとても複雑かつ敏感な問題だったため、SNSのフォロワーからアイデンティティに関する質問をされても、なかなかいい表現の仕方を見つからず、後回しにしてしまっていたというかいしさんでしたが、この時「この話を描きたい、共有したい」と思ったそうです。

 漫画が公開されると、瞬く間に反響を呼び、たくさんの人から各々のアイデンティティにまつわる話を書き込まれました。かいしさんはそのコメントを含めて「ひとつの作品として出来上がった」と感じているそう。

「今は複数アイデンティを持ててよかったと思う」「今の自分が好き」という声がとても多く、「コメントを見て『そうか、こんなに仲間がいるんだ』『今は悩んでてもきっと大丈夫になる』と思ってくれたら嬉しいです」とかいしさん。また、この作品を発表したことで、かいしさん自身も「自分はひとりじゃなかったんだ」と、心が救われたと語りました。

(Hint-Pot編集部)