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義兄の入院で介護問題が勃発 動かぬ夫と義姉の切実な電話に揺れる50代妻の決断
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:夫婦カウンセラー・原嶋 めぐみ

家族の介護は、多くの人が避けて通れない可能性のある問題です。しかし、その負担のかかり方や受け止め方は、家庭ごとに異なります。結婚当初は「親の介護は実子が行う」と約束していても、いざとなったらそうはいかない場合も……。義父母の介護をめぐって、夫との将来に迷いを抱くようになった女性の悩みを聞きました。夫婦カウンセラーのアドバイスととともにお届けします。
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「親の介護は実子が行う」と約束していたのに…
50代半ば。そろそろ落ち着いた老後を……と思っていた畑中紗香さん(仮名)は最近、夫との将来に迷いを抱くようになったといいます。きっかけは、夫の義父母の介護問題でした。
関東の小さな町にある夫の実家には、90歳近い義両親と、介護のために妻と別居している長男が住んでいます。その長男も70代手前。今年の春に体調を崩し、入院する必要が出てきました。そこで、長男の家族から夫に「少し来てもらえないか」と連絡があったそうです。
「でも、夫は『俺が行っても役に立たないし』って、どこか他人事みたいで……。これまで10年以上、義兄さんが全部やってくれていたから手を出す機会もなくて、どう関わればいいのか、わからないのかもしれません。お礼とかお詫びもしたことがないですし……」
紗香さんは「少しでも顔を出したら?」と促しましたが、夫は「兄が家も何もかも相続する予定なんだから、自分には関係ない」と渋い表情。手伝いに行くどころか、長男家族からの連絡を無視するようになったのです。
最近では、夫に連絡をしても埒があかないと思ったのか、長男の妻が紗香さんの携帯電話に直接かけてくるように。
しかし、婚前に「親の介護は実子が行う」と話し合っていたため、紗香さんは自身の両親の介護を、夫に一切頼ってきませんでした。それだけに、夫が無視を決め込むなか、自分だけが応対するのは不公平に感じるといいます。
それでも、義姉は「年金だけじゃ足りなくて、こっちが生活費を持ち出しているの。手伝えないなら、お金だけでも出すように言って」と訴えてくるそう。その声の疲れ切った響きに、紗香さんは言葉を詰まらせるばかり。耳にするたび心がざわつき、電話が鳴るたびに胸が重くなるといいます。
「相続するといっても、田舎の一軒家と畑などの不動産と、お墓くらい。それなのに夫も次兄も、すべて長兄に丸投げで、知らんぷりしています。長男が病気になったというのに、介護の話をしたくないからお見舞いに行く素振りもありません」
紗香さんは、子どもたちが味方になってくれているため、今から夫の両親の介護を押しつけられるのであれば、離婚もやむなしと考えているそう。とはいえ、介護問題がなければ夫婦関係は平穏なため、踏み切れずにいるといいます。
「“どこまで関わるのか”の境界線を明確に」
「今の紗香さんの気持ちは、『介護を担うつもりはない』という明確な立場ですよね。であれば、まずはその意思をしっかりとご主人に伝えることが第一歩になります」
そう話すのは、夫婦カウンセラーの原嶋さん。
「介護の話は、感情的な押しつけ合いになりやすいんです。だからこそ、『どんな条件なら関われるか』『どの条件なら関われないか』という線引きを、事前にご自身の中で決め、それを早めに共有することが大切です」
さらに、夫が現状を理解していない場合は、義姉からの連絡内容や、金銭面の負担についても包み隠さず伝えることが必要だといいます。
「電話で義姉がどんな話をしているのか、どれだけ切実な状況なのかを、ご主人が自分の耳で理解することが重要です。そのうえで、介護に関わらないのであれば、その意思と理由を兄弟間でも共有し、今後の連絡や金銭的要求についても、ご主人自身が対応するよう話し合っておきましょう」
原嶋さんは最後に、こうつけ加えます。
「介護問題は長期化することが多く、先延ばしにすればするほど負担が大きくなります。今のうちに“どこまで関わるのか”の境界線を明確にしておくことが、ご自身を守ることにもつながりますよ」
(和栗 恵)