仕事・人生
両親の介護のために会社を退職 50代独身男性の苦悩と疲弊 「人生がすべて狂いました…」
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厚生労働省がこのほど発表した「2019年の国民生活基礎調査」の介護についての調査では、主な介護者を見ると、要介護者等と「同居」が54.4%で最も多く、「同居」の主な介護者の要介護者等との続柄を見ると「配偶者」が23.8%、次いで「子」が20.7%という結果になりました。老々介護も増えている一方で、両親ともに介護が必要となってしまった場合、その子どもが同居して介護を行うケースも少なくはないようです。高齢の両親の介護をしている50代男性に話を聞きました。
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父と母が次々と認知症に 嫁いだ実姉もあてにならず
柏原佳一さん(仮名・55歳)は「両親の介護のせいで、人生がすべて狂いました」と、うつむいたまま吐き出しました。
閑静な住宅街の一角に建つ、周囲と比べて大きなレンガ造りの家。ガレージには外国製の高級車。裕福な家庭であったであろうことが見て取れます。しかし「家計は、火の車なんですよ」と佳一さん。彼に、一体何が起こったのでしょうか。
「6年前に父が、4年前に母が、ともに認知症を患い、介護をせざるを得なくなったんです。父1人の時は母と2人で介護をしたので、私自身は仕事を辞めず出張や残業を減らして対応しました。しかし、母が倒れてからはそうもいかなくなり、仕方なく仕事を辞めることになったんです」
仕事を辞めた現在、もちろん収入はゼロ。大手企業で働いてきた父親の年金と、これまでの貯蓄で何とかやりくりをしているといいます。しかし、自分自身が好きで就いた仕事を辞めてしまった後悔が毎日のように襲ってくるのだとか。
「正直、仕事は辞めたくなかったです。でも、父は要介護認定1で、母は要支援2。こんな状態じゃ、特別養護老人ホームにはとてもじゃないけど入れません。民間の介護施設も考えましたが、両親の年金と私の稼ぎをすべて足して、どうにかこうにか2人を入居させられるレベル。そうなると私の生活が立ち行かなくなるし、家の維持費なども払えなくなるので入居させられませんでした」
佳一さんには姉が1人いますが、「嫁いだ身だから、お金も支援もできない」と、実親のことにもかかわらず実家にも近寄らないそう。
「私自身も、もっと早くに家を出ていれば、もっと早くに結婚していれば……」
時に、いろいろな考えがよぎってしまうといいます。今後両親が亡くなった際、仕事を辞め、食べる術を失ってしまった自分はどうなってしまうのだろう? 自分自身はいくら年金がもらえるのだろう? 結婚もせず独身の自分がボケた際、誰にも迷惑をかけずに死ぬことすらできないかもしれない……。佳一さんは、そんな不安に苛まれ、夜もゆっくり休むことができずにいるといいます。