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認知症発覚の祖父 世話をめぐる家族会議は泥沼化 険悪な事態を救ったのは“おばちゃん”の一喝
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離れて暮らす父母や祖父母など、普段一緒に暮らしていない親族の不調に、人はなかなか気付けないもの。しかし、加齢と比例した“衰え”は、どんな人にも平等に降りかかってきます。認知症の父と向き合う筆者が綴る連載「アラフィフ娘の明るい介護」ですが、今回は我が家のことではなく、離れて暮らす祖父が認知症になってしまい、親族一同の関係が泥沼化してしまったという女性から話を聞きました。
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祖母が亡くなり一人暮らしをしていた元自衛官の厳格な祖父
「もうかなり昔のことなのですが、母方の祖父は自衛隊に所属したことがあるらしく、背筋がピシッと伸び、歩き方もスマート。温厚な性格だけど、間違ったことをした時は厳しく律する、いつ見ても『かっこいいな』と思わせる人でした」
今回、お話を聞かせてくださったのは、東京在住の中田光希さん(仮名・32歳)。ご家族・親族は地元である中国地方で暮らしています。
「そんな祖父がボケちゃったんですよ。祖父が転んで怪我をし、入院したことで発覚しました」
入院前までは一人暮らしをしていたという光希さんの祖父。自衛隊で調理を担当したことがあり、家庭的な料理なら何でも作れ、洗濯や掃除も亡くなった光希さんの祖母より得意だったそう。
「健康オタクとまではいきませんが、毎朝毎夕、散歩に出かけ、1日1万2000歩は歩くようにしていると祖父から聞いたこともあります。一人暮らしでも何も問題はないように思っていましたが、それでも年相応に衰えは来ていたようで……昨年末に、近所にある石段状の坂道で転んでしまい、大腿骨にヒビが入ってしまったんです」
一報を受けた光希さんは、正月休みを利用して帰省。母とともに病院へ見舞いに行ったといいます。そこで見たのは、変わり果てた祖父の姿だったのだとか。
「温厚で小粋な祖父が、看護師さんに対して暴言を吐く瞬間を目撃してしまったんです。やれ食事が少ない、まずい、包帯の巻き方がなっていない、シーツが硬い、呼んだのにすぐ来ないのは何事か――と、とにかく不満だらけで、『別の人なんじゃ……?』と、軽くパニックになりました」
その後、主治医から病状を聞くことになり、光希さんは「祖父は入院してからずっと、あんな調子で暴言を吐いているんですか?」と聞いてみたそう。すると、医師から真顔で「普段と様子が違うんですか?」と聞き返されてしまったといいます。