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夫の口癖は「そんな約束したっけ?」 娘へのひと言から見えた家族の距離と妻の本音

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

忘れっぽい夫に、堪忍袋の緒が切れた理由(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
忘れっぽい夫に、堪忍袋の緒が切れた理由(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 長く連れ添った夫婦でも、繰り返される小さなすれ違いが、積もり積もって心の疲れにつながることがあります。お悩みを寄せてくれたのは、結婚から30年以上、事あるごとに夫から約束を反故にされ続けてきたという50代女性。夫婦カウンセラーのアドバイスとともにお送りします。

 ◇ ◇ ◇

どんな約束も、夫の前ではチリに等しい?

 千葉県在住の鈴井芹那さん(仮名)は、3歳年上の夫と社内恋愛の末に、20代半ばで結婚。専業主婦となり、2人の子育てに追われてきました。現在は50代半ばで、子どもたちが巣立った今、「これからは自分の時間を大切にしよう」と心に決めていたといいます。

「息子は海外勤務でなかなか会えませんが、娘は電車で20分ほどの場所でひとり暮らしをしていて、ときどき夕飯を食べに来てくれます」

 芹那さんは友人が多く、子どもも健康に育ち、順風満帆に見える生活。けれど、ひとつだけ長年の悩みがありました。

「夫は、本当に約束を守れない人なんです。『会社の帰りに牛乳を買ってきて』と頼んで『わかった』と言うのに、手ぶらで帰ってくるのは日常茶飯事。子どもが小さな頃も、父兄参観や運動会をお願いしても別の予定を入れてしまったり、親戚の集まりをすっぽかしたり……。最初の頃は怒っていましたが、そのうち、期待しないほうが楽だと、私も子どもも学んでしまいました」

 今年のゴールデンウィークに、娘が「温泉に行こう」と誘ったときもそうでした。

「夫は『娘が大人になったんだなぁ……』と、涙ぐんで喜んでいました。私も、娘が一生懸命考えてくれたことなので、夫が絶対に忘れないようカレンダーに赤丸をつけ、何度も『覚えている?』と念押ししたんです」

 ところが前日の夜になって、夫が信じられないことを言い出し、芹那さんと娘さんは思わず顔を見合わせたといいます。

「『あれ? 温泉なんて約束したっけ? 同僚と海釣りに行く約束しちゃった』って言い出したんです」

 娘さんはあきれてしまったようで、「大丈夫、お父さんの分は予約していないから」と冗談を言ったそうです。すると夫は黙り込んでしまい、そのまま口をきかず、翌朝に黙って釣りへ出かけてしまいました。

 結局、芹那さんの母を連れて、3人で旅行することに。1泊して帰宅すると、夫がいつも通り接してきたため、今度は芹那さんが許せず、沈黙を貫いているそうです。

「いつものことなんですよね……。娘は『お父さんのことはもう二度と誘わないからいい』と言っているのですが、きちんと反省していないことが許せません。一度はっきり言ってやりたい気持ちはあるのですが、長年目をつぶってきたので、いまさらなんて言えばいいのかわからないでいます」

夫として、家族として、最大の約束は守っている?

「ご主人は約束を守れないことが多いですが、それは“軽んじている”というより、その場その場で気持ちが移りやすいタイプかもしれません。ただ、芹那さんにとっては長年の積み重ねがあり、今回のように大事な予定を忘れられると、どうしても許せない気持ちになりますよね」

 そう話すのは、夫婦カウンセラーの原嶋さん。

「一度はっきり伝えたいと思うなら、何が嫌だったのかを具体的に言葉にすることが大切です。『温泉を忘れたこと』だけでなく『娘が準備してくれた気持ちを踏みにじった』とか『私が何度も確認した努力が無駄になった』など、感情と事実をセットで整理しましょう」

 また、話すタイミングも重要だそうです。

「感情が高ぶっているときは避け、日常の落ち着いた時間に短く伝えるのがポイントです。『これからはこうしてほしい』という要望を添えると、単なる責めにならず、前向きな話し合いになります」

 さらに、夫の忘れ癖が直らない可能性を視野に入れて、期待値を調整することも負担軽減につながります。

「本当に守ってほしい約束を少数に絞って、紙やスマートフォンのメモなど、複数の方法で共有しましょう。すべてを改善しようとすると疲弊しますから、優先度を決めることが、芹那さんの心の平穏につながります」

(和栗 恵)