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なぜ寿司は2貫ずつ? 知られざる意外な理由 日本人の美意識に合った江戸の知恵とは
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訪日外国人からも人気の日本の寿司。回転寿司をはじめ、寿司店で握り寿司を注文すると、2貫セットになって提供されることが多いですが、なぜなのでしょうか。その理由について、探ってみました。
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もともとは、かなりの大きさだった握り寿司
握り寿司が登場したのは、江戸時代。もともとは押し寿司でしたが、握り飯に魚をのせることを考え出し、江戸の人々の心を掴みました。忙しい庶民が手軽に食べられる食べ物として、人気を集めたとされています。
屋台で提供され、その場で立ちながら手でつまんで食べるスタイルが一般的で、現代でいうファストフードのような存在だったようです。ちなみに、客が店ののれんで手を拭いて出入りしたため、「のれんが汚れている寿司店は、うまくて繁盛している」との言い伝えが残っています。
当時、出されていた寿司は、握り飯大というかなりの大きさでした。現代の握り寿司と比べると、実に倍以上もあったとみられています。
そんな大きな寿司が今の形になったのは、江戸時代の終わり頃でした。諸説ありますが、客が食べにくそうにしていたことから、半分に切って出されるようになったとか。寿司店の店主だった華屋与兵衛という人物が、食べやすいよう最初から2つに分けて握ることを思いつき、2貫セットにして出すようになったとの説も伝えられています。
「対にする」ことが日本人の美意識と合致
寿司の大きな握り飯を2つに切って分けるのではなく、最初から小さく2つに握って1皿で出したことは、意外にも「縁起が良い」と、当時の人々に受け入れられました。日本人が、古くから「2つで1組」「対になるもの」を好む美意識に合致したことが理由のようです。
やがて、1皿に2貫の寿司をのせて提供するスタイルは「小さくて食べやすい」「2度味わえる」との評判で幅広く浸透し、定着していったといわれています。現在は、寿司を注文すると1貫で出てくることもありますが、2貫セットで出てくるのはその名残と考えられるでしょう。
寿司は手で食べるもの? 箸で食べても良い?
よく「寿司は手で食べるもの」といわれますが、それも握り寿司がファストフードだった江戸時代の習慣が、背景にあるようです。もちろん今は、箸を使って食べても問題ないとされています。
手でも箸でも、寿司を食べるときは、シャリが崩れないよう注意しましょう。手で食べる場合、親指と人差し指、中指を使って寿司の側面とネタを軽くつまみ、横に寝かせて持ち上げるのがポイントです。
箸を使う場合は、箸でシャリの真ん中あたりを軽く挟み、寿司を少し横に寝かせるようにすると安定します。そのまま上にまっすぐ持ち上げようとすると、崩れやすくなるので注意しましょう。
寿司は、基本的にひとくちで食べるのがマナーです。もしひとくちで食べられない場合は、皿に戻さず、手や箸で持ったまま食べ続けるとスマートに見えます。
かつては握り飯ほどの大きさだったことを思えば、現代の寿司がいかに食べやすく工夫されているかがわかります。江戸時代に思いを馳せながら口に運べば、また違った味わいを楽しめるかもしれません。
(鶴丸 和子)
