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思春期の娘の弁当をひとくちずつかじった夫 別居すべき? 夫婦カウンセラーがアドバイス
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教えてくれた人:夫婦カウンセラー・原嶋 めぐみ

子どもが思春期を迎えると、親のなにげないひと言や行動が、予想以上に心の距離を広げてしまうことがあります。夫の娘への接し方が原因で、家庭内に溝が生まれているという女性。「夫と別居したほうがいいのか」と、真剣に悩んでいるといいます。夫婦カウンセラーのアドバイスとは。
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娘に対し過干渉な夫が、不気味な行動を取るように
東京都在住の田原啓子さん(仮名・40代)は、夫と娘、息子2人、そして義母との6人暮らし。夫と二人三脚で建てた家に義母を引き取り、にぎやかな日々を送っています。
優しく、理解のある義母との関係は良好。子育てをサポートしてもらったおかげで、啓子さんは会社で順調にスキルを磨き、年に1度は家族そろって海外旅行を楽しむなど、余裕ある暮らしを送ってきました。
ただ、夫の子どもへの過干渉だけは、昔から気になっていたそうです。とくに娘への干渉は強く、娘が「ダンスを習いたい」と言えば「女性の先生じゃなきゃダメだ」と大騒ぎ。小学校の宿泊学習や修学旅行の朝には、布団から出ずに「パパがこんなに具合悪いのに行くのか」と涙ぐむこともありました。
「小さい頃の娘は、そういう父親の言動を半分冗談として受け流していました。でも、今年の春に中学校へ入学してからは、自分の世界や友人関係を大事にしたい気持ちが強くなり、以前よりも反発するようになったんです」
今年の6月、啓子さんは仕事の疲れで体調を崩し、義母も旅行で不在にしていたことがありました。そこで、娘に家族分のお弁当を買ってきてもらうことに。夕食時もそのまま2階で休んでいると、顔をこわばらせた娘が突然、部屋に飛び込んできたそうです。
「『どうしたの?』と聞くと、泣きそうな顔で『もう無理……』と」
話を聞くと、娘が席を離れて飲み物を用意している間に、夫が娘のお弁当のおかずを次々と、ひとくちずつつまんでいたとのこと。
「娘はまたか……と思って、まだ手つかずだった夫の弁当と交換したそうなんです。そうしたら、そっちにも手を伸ばされたみたいで」
怒った娘が「やめてよ」と言うと、夫は笑いながら「パパが味見してあげたんだ」と軽口を返し、ハンバーグを娘の口元に押しつけてきたのだとか。
「父親としては冗談のつもりだったのかもしれませんが、娘は嫌悪感が強くて『もう一緒に食事したくない』とまで言っています」
啓子さんが夫に「もうそういうのはやめて」と諭すと、夫は少し不満げな表情を見せただけで、深く考える様子がないそう。
「夫は相変わらずちょっかいを出す隙を狙っていますが、娘は夫が帰宅するとすぐに自室へこもったり、私のそばから離れないようにしたりと自衛しています。娘のためにも、夫と別居したほうがいいのか悩んでいます」
物理的に距離を取らせ、娘の心を守る対策を
思春期を迎えた女の子は、自分の世界や価値観を大切にしたい気持ちが強くなります。原嶋さんは「そんななかで、本人が『嫌だ』と感じる接触や干渉が続くと、たとえ親子でも距離を置きたくなるのは自然なこと」と話します。とくに、身体的な境界線を守ってもらえないことは、安心感を損なう大きな原因になるといいます。
ただ、父親側にも「昔は喜んでくれたのに、急によそよそしくなった」という戸惑いがあると指摘します。
「夫が娘に対し、過度の愛情を寄せているのは間違いないでしょう。だからといって、子どものときと同様に干渉し続けるのはNG。お父さんにとっては冗談やスキンシップのつもりでも、娘さんにとってはもう笑えないことだと、きちんと伝える必要があります。その際は『娘がこう言っている』という事実を淡々と伝え、善悪のジャッジよりも“本人がどう感じているか”を尊重する視点が大切です」
それでも態度が改まらない場合、娘さんの心の安全を守るためには、生活動線を工夫して距離を取ったり、一時的に別居したりするのも選択肢のひとつです。原嶋さんは「別居は夫婦関係の終わりを意味するものではなく、冷却期間としての役割もあります。娘さんが安心できる環境を優先に考えてほしい」と助言しました。
(和栗 恵)