仕事・人生
世界が息をのむ奇跡のリボン織 小さな工房が糸からつむぐオンリーワンの美と挑戦
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「創作工房糸あそび」によるオリジナル生地「リボン織」は、4ミリ幅のシルクリボンを経糸と緯糸に使って織り上げた繊細な美しさを誇る作品です。海外では「クレイジー!」という驚きの声も上がる丁寧な手仕事は今、2代目・山本徹二さんから3代目・徹さん、そして4代目の昇汰さんへと受け継がれています。絹にこだわりながら、染めから織りまで一貫して手掛ける3代目が願う京都・丹後地方の未来とは。
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「丹後らしくない」道を歩むきっかけは先代から
工房の軒先で陰干しされているのは、美しいグラデーションで染められたシルクの糸束。「丹後ちりめん」の多くが白無地の後染め織物ですが、「糸あそび」では「丹後であって丹後らしくない生地の創造と企画」をコンセプトに、染めた糸で生地を織る先染め織物を手掛けています。「丹後に工房を構える以上はシルクをメインとしていますが、天然素材であればウール、麻、綿、すべて織ります。手絣染めする糸の色もさまざまで、織り方もいろいろ。だから、“丹後であって丹後らしくない織物”なんです」と3代目・徹さん。
「丹後の織物」という既成概念を取り払うと、そこには「あそび」が生む可能性が広がりました。「丹後らしくない」道を歩むきっかけとなったのは、2代目が始めた「リボン織」です。4ミリ幅の絹リボン糸をグラデーションに染め、経糸と緯糸として使い織り上げたオリジナル生地。生地企画会社で働いた10年間に、日本各地で多種多様な生地に出合った徹さんですが、「同じ生地を見たことがなかったんですよ」と振り返ります。
「丹後に帰ろうと思った時、あらためてリボン織を見て『うちってすごい織物をやっている』と気付いたんですよ。だったら、リボン織を全面に出して『糸あそび=リボン織』となるようにしようと。今ではうちの看板になり、海外の展示会に行っても『こんな織物はない』と言われます」
リボン織の最大の特徴は、生地の長い辺にあたる経糸に4ミリ幅の平たい絹リボン糸を使いながらも、リボン糸が拠れることなく織りあがるところ。3代目から参加するようになった海外の展示会でも、進出当初から高い評価を受け、「皆さんに『見たことがない』と言われますが、とくに織物をわかっている人には必ず『クレイジー!』と驚かれます」。そう話す徹さんは最高の笑顔を浮かべます。

実は、コロナ禍の折、このリボン織は存続の危機に立たされたことがあるそう。絹リボン糸は元々、石川県の機屋2軒が作っていたものの、コロナ禍の影響でそろって廃業することに。そこで徹さんは石川まで出掛け、辞めた機屋に直談判し、リボン織機を2台、譲り受けることにしたのです。
「海外で必ず聞かれるのが『どうして4ミリ幅なの?』ということ。『これは買っているんです』と答えると、『糸から自社で作れるとすごいよね』と言われ続けてきた。だから、リボン織機を譲り受け、今は糸から作れるようになったので、完全な自社生産=オンリーワンになりました」
