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反復横跳びをしながら前進? 新たな可能性を探る京都の老舗・6代目 「ものづくり」で“遊び”と“挑戦”を続けるワケ

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

開化堂6代目の八木隆裕さん【写真:荒川祐史】
開化堂6代目の八木隆裕さん【写真:荒川祐史】

 京都で茶筒づくりを続ける開化堂は、今年で創業150年を迎える老舗です。ものづくりの価値を未来につなぐことが役目だと考える6代目・八木隆裕さんは、茶筒づくりの本流を守りながらも、様々なコラボを実現させたり、2016年にはカフェをオープンしたりするなど、時代に合った“反復横跳び”を重ねて新たな可能性を広げています。八木さんの目に映る伝統工芸の魅力とは……。遊び心を忘れずに前進し続けるフィロソフィーに触れます。

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「I」ではなく「WE」のものづくり

 開化堂の今、そして未来の話をする時、八木さんは子どものように目を輝かせます。楽しくて仕方ない。そんなワクワク感があふれ出ています。

「創業150年なので復刻缶や記念缶を販売したり、イベントを企画したり、いろいろやっていきたい。石川県にある上出長右衛門窯の6代目・上出惠悟くんが東京芸術大卒でデザインもしているので、キャラクターを作ってもらいました。かわいくてソフビ(ソフトビニール人形)も作りたいくらい(笑)」

 創業200年を迎える頃は、おそらく孫の代。「50年前はこんなことをやっていたんだーー」と未来の担い手に面白がってもらうため、「今を楽しくやっている」と笑います。

「背中に祖父と親父を感じながら、孫の代も考えて、今、自分は何をすべきか考えますね。明治から始まる時間軸の中に今=僕があって、その先もつながっていくイメージ。自分自身でありながら自分自身ではない感覚、みたいなものは持っています」

 英語では「ものづくり」を「CRAFT(クラフト)」と表現します。海外の人に日本の伝統工芸を説明する時、八木さんは「I」ではなく「WE」のものづくりだと説明するのだとか。

「自分自身を表現するアーティストの方々は『I』だけど、僕たち職人は『WE』の方かなと。作り手と使い手のin-between(間)であり、祖父と孫のin-betweenであり、常にいろいろなことのin-betweenにある。だから『WE』。でも、やっぱり6代目という自分の色もあるので『W』と『E』の間に小さな『i』がある『WiE』くらいの感覚ですかね(笑)。ただ、次の代にバトンタッチする時は小さくても『i』は邪魔になるので、『W』と『E』の間に『i』が溶け込んで初めて渡せるのかなと思います」