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海外でも愛される京都の伝統工芸 「パンって網で焼かへんの?」から生まれた超人気商品 「金網つじ」2代目が考える伝統工芸の役割

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

伝統工芸の京金網「金網つじ」2代目の辻徹さん【写真:荒川祐史】
伝統工芸の京金網「金網つじ」2代目の辻徹さん【写真:荒川祐史】

 京都に住まう人々の暮らしの中で受け継がれてきた伝統工芸のひとつ、京金網。その歴史は平安時代にまでさかのぼり、日常の道具として人々の暮らしに彩りを添えてきました。京都の高台寺一念坂にある「金網つじ」の2代目・辻徹さんは、職人の仕事は「受けの仕事」だと言います。使い手のことを考えながら「何が使いやすいのか」「どんなものを使ってもらえるのか」、思いをめぐらせた末に生まれた道具たちは海外でも評判を得ています。職人として信念を貫く2代目が見据える、伝統工芸の役割とは――。

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「パンって網で焼かへんの?」から生まれた人気商品

 一念坂に佇む店舗の戸を引くと、そこには凛とした美しさをまとった生活道具が並びます。豆腐すくいや茶こしといった定番から、コーヒードリッパーやランプシェードなど現代の暮らしに寄り添う道具まで、網目文様が織りなす繊細さと金属の持つ丈夫さのハーモニーに目を惹かれます。

「伝統工芸」という言葉の枠にとらわれることなく、時代の変化に即した道具を作ることが2代目流。「生き証人ではないけれど、その時代に生きているからこそ、その時代の人間やからこそ、時代にマッチした道具が作れる。何百年も前の人、何百年も先の人には、今の時代に合ったものは絶対作れませんから」と辻さんは言います。

 人気のセラミック付き焼き網はパンをおいしく焼けると評判ですが、こんな誕生秘話も。

「子どもの頃から僕の家では、トースターではなく焼き網でパンを焼くのが当たり前だったんですよ。実はトースターを知ったのは大人になってから。トースターでパンを焼いたら、カチカチになって全然おいしくない。友達に『パンって網で焼かへんの?』と聞いたら『焼かへんわ』って(笑)。それやったら商品化してみようか、となりました」

 辻さんの遊び心が発揮され、京金網の技術を生かしたアクセサリーも商品ラインナップに加わるなど、伝統にあぐらをかくことなく新たな挑戦を続けています。