Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

サンマの塩焼き 裏返して食べるのはマナー違反? 栄養士が解説する「正しい食べ方」とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

サンマの塩焼き(写真はイメージ)【写真:写真AC】
サンマの塩焼き(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 秋の味覚のひとつ「サンマ」。今年は豊漁といわれ、手頃な価格で楽しめそうです。塩焼きが一般的ですが、丸ごと1尾食べた際に「もっときれいに食べられたかも」と思うこともあるかもしれません。とくに人前でどう食べたら良いか、迷うこともあるでしょう。正しい食べ方はあるのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

最初に頭から尾まで一直線に箸を入れるのがポイント

 サンマは体全体が食用に適しており「残すところがない魚」といわれています。サケやブリなどと違って、切り身で売られていることはなく、丸ごと1尾で調理されます。とくに塩焼きしたサンマは、身だけではなく、内臓もおいしく、皮も薄いのでパリパリとした香ばしい食感が特徴です。

 サンマの塩焼きは、頭から尾まで、骨もついた状態で丸ごと出てくるので「食べ方が難しい」と思われがちです。とくに表側の身を食べたあと、裏側を食べるときにどうしたら良いのか、迷うこともあるでしょう。

 食事は自分がおいしく味わうことが第一ですが、周囲に人がいる際は、配慮が必要です。マナーの観点からいうと、サンマの塩焼きをひっくり返して裏側を食べるのは避けたい行為とされています。理由は、昔「ひっくり返す」ことは、謀反や転覆などを連想させるとして、タブー視されていたなど諸説ありますが、実際は身が崩れ、汚くしてしまう恐れがあるためでしょう。

 ひっくり返さずに食べるには、最初に表側の頭から尾まで、骨に沿って横一直線に箸を入れるのがポイントです。それから表側の頭部の上半分から食べ進めていきましょう。下半分も同様に、頭から尾に向かって食べます。

 表側の身を食べ終わったら、頭のすぐ近くにある中骨を、箸で掴んで少し浮かせるようにします。できれば箸だけで行うほうが良いですが、やりにくい場合は頭に手を添えても構いません。そのまま骨に沿って尾に向かって箸を静かに動かします。尾がついたままだと骨と身が離れにくいので、箸で尾を切ると良いでしょう。骨がきれいにはずれ、裏側の身と分けることができます。

 サンマに限らず、焼き魚など骨がついた料理で、骨をはずさず、骨越しに裏側の身を箸でつつくのは、「透かし箸」というマナー違反にあたります。骨があるので「食べ方が難しい」と思われやすいのですが、上記のコツをつかめば、意外に簡単に骨がはずれるので、おいしく食べ終えることができるでしょう。

取った骨や頭を皿にまとめておくことも大切

 切り離した尾、取った頭と中心の骨は、残りの裏側の身を食べやすいようにお皿の上部(奥)に移動させましょう。使った手はおしぼりなどでそっと拭きます。食べ終えたら、頭のついた骨は二つ折りにし、小骨や尾などと一緒にまとめておくとスマートです。

 ひっくり返さずに食べているのに、食べ終わった後に、取った頭や骨などが皿に散らばっていると、見た目がよくありません。食べ残しも含め、残したものは皿の上部にまとめましょう。

 サンマには、オメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)など、脳の活性化や血流を促す良質な魚油が多く含まれています。このほか、体の組織に必要なたんぱく質、丈夫な骨や歯を作るのに欠かせないカルシウム、カルシウムの吸収率を上げるビタミンDも豊富です。

 旬ならではのサンマを、マナーとともに、おいしく、美しく味わいたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾