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からだ・美容

更年期世代が知るべき秋の不調対策 疲れた心と体を内側から整える中医学の知恵

公開日:  /  更新日:

著者:かみむら 佳子

体調の変化に気をつけたい季節の変わり目(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
体調の変化に気をつけたい季節の変わり目(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 今年の猛暑で体に負担がかかり、疲れを感じている人は少なくないでしょう。秋口は朝晩の寒暖差が大きく、自律神経のバランスを崩しやすいため、いわゆる「秋のだるさ」や「気分の沈み」といった不調を感じやすい時期です。更年期の女性の元気をサポートする、国際中医薬膳師のかみむら佳子さんによる連載。今回は中医学の視点から、秋に起こりやすい不調や、心と体を整える食や習慣を紹介します。

 ◇ ◇ ◇

秋に不調を感じやすい理由とは

 秋は空気が乾燥しやすく、中医学では肺の働きが弱まりがちな「肺燥(はいそう)」の季節とされます。そのため、呼吸が浅くなったり、喉や鼻の乾燥を感じたりしやすいのです。

 さらに更年期の女性は、ホルモンバランスの変化により、私たちの体のエネルギー源である「気」が不足しやすい年代です。「気虚(ききょ)」と呼びますが、疲れやすい、やる気が出ない、胃腸の調子が落ちる、眠りが浅い……そんな不調が重なりやすくなります。

 中医学では、「気」は主に2つのルートから得られると考えます。1つは「食べ物」、そしてもう1つは「呼吸」です。食からの「栄養」と自然界のエネルギー「清気(せいき)」。この2つが合わさることで、全身をめぐる“元気”がつくられます。

 肺の働きが影響を受けやすい秋だからこそ、「気」を補うための食や習慣を、積極的に取り入れてみましょう。

「気」の不足を補う秋の食材

栄養豊富な秋の食材、山芋【写真:かみむら佳子】
栄養豊富な秋の食材、山芋【写真:かみむら佳子】

 まず秋の食卓に取り入れたいのが、山芋です。気を補い、肺を潤し、呼吸を深くする――中医学の考えを基にした薬膳では、「補気(ほき)」の代表格である栄養豊富な食材です。季節の変わり目で疲れやすい胃腸にもやさしく、一品プラスするだけで、秋の体に元気と潤いを届けてくれます。

 山芋は、すりおろして汁物やお好み焼き、ハンバーグのタネに加えたり、切って炒め物やサラダに使ったりと、日々の食卓に取り入れやすいのが魅力です。外食の際も、とろろそばやマグロの山かけ、磯辺揚げやチーズ焼きなど、山芋を使った料理を意識して選べば、気を補う食事につながります。

 最近ではコンビニでも、パック入りや冷凍タイプのとろろが手に入ります。温かいごはんやそばにそのままのせるだけで手軽に活用できます。忙しい日でも、薬膳の知恵を日常の食事に手軽に取り入れてみましょう。

「元気」を取り戻す日常的な習慣

 もうひとつ、元気を取り戻す習慣として実践したいのが、深呼吸です。忙しい毎日のなかで、ゆっくり息を吸う時間は意外と少ないものです。1日数分の深呼吸だけでも、「清気」を取り込むことができ、気のめぐりが整いやすくなります。

 深呼吸を取り入れるタイミングとしては、朝と就寝前、そして入浴中が良いでしょう。朝は、中医学では「新鮮な清気を取り込み、気をめぐらせるのに良い時間」で、一日のスタートを助けるタイミングとして知られています。

 一方、夜は「一日の活動で乱れた気を整え、心を鎮める養生の時間」です。深呼吸をすることで、副交感神経を優位にし、入眠をスムーズにする効果も期待されます。また入浴中は、体が温まって、呼吸が深まりやすいです。温浴の血流改善とリラックス効果が重なり、より穏やかに整えられるでしょう。

 呼吸から取り入れられる「気」は、更年期世代ではとくに不足しやすいと考えられています。日常のなかでも、ふと気づいたときに深呼吸を心がけるとよいでしょう。

 秋は、体の内側から静かに整える季節。「気」を補う食と習慣を取り入れて、心地よく過ごしましょう。

(かみむら 佳子)

かみむら 佳子(かみむら・けいこ)

大学卒業後、ハウスメーカーの営業職にて勤務後、28歳でフードコーディネータースクールに通い、アシスタントを経て独立。35歳で第2子流産後に続いた体調不良をきっかけに、薬膳を学び始める。「あなたスタイル薬膳RKazen」を主宰し、身近な食材で手軽に養生を実践する簡単薬膳や中医学の指導、セミナーなどで活動中。