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からだ・美容

小児アトピーとアレルギーの今 30年で変化した病気の傾向と新しい治療

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

増加傾向にあるという子どものアレルギー(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
増加傾向にあるという子どものアレルギー(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 小児のアトピー性皮膚炎やアレルギーが近年、増えているといわれますが、果たして実際にそうなのでしょうか? また、子どものアレルギーやアトピー性皮膚炎の治療も近年、進化しているそうです。今回は、小児アレルギーの診療に詳しい小児科医の長尾みづほ先生に聞きました。

 ◇ ◇ ◇

アレルギー疾患の実態と変化

「アレルギー全体はこの30年で増えていますが、病気ごとに傾向が違います」と長尾先生は話します。

 乳幼児に多いアトピー性皮膚炎は幼児でとくに多く、全国的に10人に1人ほどの子どもに見られます。ただし、新しい注射薬や飲み薬、塗り薬が登場したことで、以前よりコントロールしやすくなるケースが増えているといいます。

 気管支喘息は1980年代から2000年代にかけて増えましたが、この10年ほどで小児の有病率は減少傾向にあります。吸入ステロイドの普及や受動喫煙対策、公害対策の成果と考えられています。ただし、小さな子どもでは、風邪をきっかけに咳が長引いたり、ゼイゼイしたりする症状が依然、残っているそうです。

 一方で、食物アレルギーや花粉症は増加傾向にあります。食物アレルギーは卵・牛乳・小麦が「三大原因」とされていましたが、最新調査では卵に次いで「クルミ」が第2位に。ナッツ類のアレルギーが増えているのです。花粉症も低年齢化が進み、小学生の3割以上がスギ花粉症を持つとされます。

アレルギーマーチとリスク要因

「アレルギーマーチ」のイメージ図
「アレルギーマーチ」のイメージ図

「アレルギーマーチ」という言葉をご存じでしょうか。

 これはアトピー性皮膚炎から始まり、成長に伴って食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎へと移行していく現象を指します。長尾先生は「必ず全員がこの道をたどるわけではありませんが、重症のアトピー性皮膚炎や家族歴のある子、早期から複数のアレルゲンに感作されている子はリスクが高い」と話します。

 アトピー性皮膚炎を早い段階でコントロールすることが、将来のリスクを減らすうえで重要であるといえるそうです。

皮膚バリアと経皮感作のメカニズム

「アトピー性皮膚炎の背景には『皮膚バリア機能の低下』があります」と長尾先生。健康な皮膚はレンガの壁のように角層が積み重なり、水分を保ちながら外敵をはね返します。ところが、アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリアとなる成分が不足し角層が壊れやすく、異物が入り込みやすい状態に。

 すると「経皮感作」と呼ばれる仕組みで、アレルゲンが皮膚から体内に侵入し、免疫がそれを異物と覚えてしまいます。皮膚バリアが壊れていると、空気中やホコリのごく微量のアレルゲンでも、感作が起こることがあります。そのため、日常的なスキンケアで皮膚を保湿することなどで、予防につながる可能性が高いそうです。