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食べて症状が出ても食物アレルギーではない? 「間違った知識が多い」と指摘するアレルギー

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

食物アレルギーは蕁麻疹などの皮膚疾患が最も多い(写真はイメージ)【写真:写真AC】
食物アレルギーは蕁麻疹などの皮膚疾患が最も多い(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 近年、認知度が増している「食物アレルギー」。ただし、表面的な症状だけで食物アレルギーと自己判断したり、間違った知識を持ったりしている人も多いようです。そこで食物アレルギーについて、公益財団法人 日本アレルギー協会理事長で近畿大学病院 病院長の東田有智さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

アレルギーとは免疫反応が過剰に働いてしまうこと

 食物アレルギーについて、東田さんは「認知度は上がっているけれど、まだまだ間違った知識が多い」と指摘します。そもそもどのようなものなのでしょうか。

「人間にはウイルスや細菌などの異物が体に侵入した際、ウイルスを攻撃し排除する免疫反応があります。しかし、食物などの体に害のない物質を異物と判断し、攻撃排除しようとする免疫反応が過剰に働いてしまうことがあります。その際に体に現れる湿疹やかゆみなどの症状がアレルギーです。ですから、食物アレルギーの場合、初めて食べたものでアレルギーが起こることはないのです」

 食物アレルギーの場合、食物に含まれるたんぱく質がアレルゲンとなりますが、当然ながらアレルゲンには個人差があります。独立行政法人環境再生保全機構発行の「食物アレルギーを正しく知ろう 2021改訂版」によると、日本では卵、牛乳、小麦などが多く、全体の3分の2を占めているそうです。

自己判断は危険! 蕁麻疹は食物アレルギーでないことも

 食物アレルギーにはいくつかのタイプがありますが、一般的に広く知られているのが、食後2時間以内にアレルギーが現れる「即時型症状」といわれるものです。

「まず、体の表面に現れる蕁麻疹や嘔吐、次にのどのイガイガ感や呼吸困難といった症状が現れ、なかでも重篤な状態になると、血圧低下や意識障害などのアナフィラキシーショックが起こります」

 消費者庁の「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」2017年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果報告書によると、症状出現頻度は「皮膚」が最も高く86.8%、次いで「呼吸器」(38.0%)、「粘膜」(28.1%)、「消化器」(27.1%)、そして「ショック」が10.8%となっています。日本では毎年、数名程度がアナフィラキシーショックで亡くなっているといいます。

 2012年に東京の調布市で起きた女児の死亡事故は、このアナフィラキシーショックによるものでしたが、「症状の程度というのは、そのときの体調や体に入ってきた抗原(アレルゲン)の量、加熱の有無、またたんぱく質の種類によっても強い反応を起こすものとそうでないものがあるため、予測することは難しい」そうです。

 ただ、一番多く発症する蕁麻疹に関しては、「自律神経のバランスによって発症することもあるため、実はアレルギーでないことも多い」と指摘します。また、食物アレルギーと似た症状を起こすものには、食中毒やヒスタミン中毒などの食物不耐性もあるといいます。

「たとえば、青魚を食べたときに出た蕁麻疹や腹痛を青魚のアレルギーだと勘違いする人がいますが、これは青魚の中にいたアニサキスによるアレルギーの可能性があります。また、魚は少し傷むと、体内にヒスタミンというたんぱく質が発生しますが、アレルギーと似た症状を起こすため間違えやすく、注意が必要です」

 大事なのは、自己判断せずにきちんと医師の診察を受けることだといいます。