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長芋を触るとかゆくなるのはなぜ? キッチンにあるもので解決 栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

秋掘りの長芋がおいしい季節です。焼いたり、すりおろしてとろろにしたり、さまざまな食べ方が楽しめますよね。しかし、調理中に手で触ったり、とろろなどが口についたりすると、かゆくなることがあります。かゆみを和らげるための意外な対策方法も含めて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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かゆくなる理由と対策とは
長芋を調理していると手がかゆくなったり、生で食べて口の周りがかゆくなったりすることがあります。かいてしまったら、かゆい範囲がますます広まってしまったという経験もあるかもしれません。これは、皮の近くに含まれているシュウ酸カルシウムが原因です。
シュウ酸カルシウムの結晶は針のようにとがった形で、束状につながっています。皮をむいたりすりおろしたりするとき、またはとろろなど生で食べる際に、この結晶がばらばらになって皮膚に刺さることで、その刺激がかゆみになるといわれています。
かゆみを感じた場合は、かゆみのある箇所に酢を使うと有効です。シュウ酸カルシウムは酸に弱い特性があります。酸性の酢をこすりつけることで、かゆみを抑えられます。酢をつけたら、水で洗い流しましょう。レモン汁でも同様です。
また、意外かもしれませんが、湯も有効です。シュウ酸カルシウムは熱に弱いため、40度くらいの湯にかゆい部分をつけると、かゆみが軽減します。とろろを食べる際、口の周りについてかゆくなる場合は、とろろに温かいだしを加えると良いでしょう。長芋は焼く・揚げるなど加熱調理にすると、かゆくなりません。
長芋の白い部分を触らなければ、かゆみは発生しにくいので、すりおろすときは手で持つ部分の皮をむかずに行ってください。皮をむく際は、あらかじめ手に酢をつけたり、キッチンペーパーを巻いたりして行うのも、かゆみを軽減するコツです。
長芋の栄養とは
長芋は、山芋(やまのいも)類の一種です。特徴として、でんぷん(糖質)分解酵素のアミラーゼが多く含まれています。これは、長芋自体に含まれる糖質はもちろん、ごはんなどに含まれる糖質の消化も助けてくれます。このほか、エネルギー代謝に関係するビタミンB群も比較的多めです。
ただし、アミラーゼやビタミンB群は熱に弱いので、かゆみに気をつけながら、とろろなど生のまま食べると良いでしょう。すりおろす以外に、短冊切りや拍子木切り、または袋に入れて麺棒でたたくなど、切り方によって食感が変わるのも長芋の魅力です。
長芋のぬめり成分・ガラクタンは、水溶性の食物繊維。水に溶けやすい性質で粘着性があるので、食べすぎの防止や、糖質の吸収をゆるやかにして、血糖値の急激な上昇を防ぐことが期待されています。
おいしい長芋の選び方、保存のコツとは
店頭で、カットした長芋が売られていることがあります。切り口がみずみずしく、表面に傷がないもの、できれば太いものを選ぶと良いでしょう。
長芋を保存する際は、乾燥を防ぎ、切り口を酸化から守ることがポイントです。切った断面の水分をキッチンペーパーで拭き取り、ラップでぴったりと包んだら、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。切り口に片栗粉をつけておくと、より長持ちします。
冷凍保存も可能です。すりおろすか、皮をむいて好みの大きさにカットしてからラップに包み、冷凍用の密封保存袋に入れて冷凍庫で保存しましょう。
かゆみ対策をして、秋の山の恵みを存分に味わいたいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾
