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使い切れなかった豆腐はパックに戻してもいい? 水の入っていない充填豆腐の違いも 栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

パック入りの豆腐を使う際、水が入っているため、洗い流したほうが良いのか迷うこともあるかもしれません。では、この水の正体はなんなのでしょうか。10月2日は豆腐の日。記念日にちなみ、今さら聞けない豆腐の豆知識について栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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パックに一緒に入った水には大切な役割も
豆腐のパックに一緒に入っている水は、飲料水と同じように衛生管理された水です。したがって封を開けて取り出した豆腐は、とくに洗う必要はありません。時々、豆腐が崩れて成分が溶け出して、水が少し濁っていることがあります。体に害はありませんが、気になる場合はさっと洗い流してください。
このパックに入った水には、大切な役割があります。豆腐が固くなるのを防ぐ、崩れやすいのでクッションのように衝撃から守る、そして空気に触れると雑菌が繁殖しやすいため空気を遮断する役割です。
開封後に保存する際は、入っていた水は捨てる
ただし封を開けたあとは、パックに残った水は必ず捨ててください。使い切れなかった豆腐をこの水の中に戻して保存するのは、やめましょう。開封した時点で水は外気に触れ、雑菌が繁殖しやすくなるためです。
開封後に、余った豆腐を保存する場合は、乾燥や傷みを防ぐために、深めの容器やボウルに豆腐を入れてひたひたの量の水を入れてから、フタやラップをして冷蔵してください。購入時に入っていたパックを使用する場合は、水を入れ替えて、上からぴっちりとラップをして冷蔵保存しましょう。水道水で構わないので、1日1回は水を変えて、早めに使い切りましょう。
水が入っていない豆腐もある
最近、スーパーマーケットなどでよく見かけるのが「充填豆腐」です。充填豆腐の場合は、「木綿豆腐」や「絹ごし豆腐」などと違い、パックに水は入っていません。それぞれの違いは、豆乳から豆腐を作る際の工程にあります。
○木綿豆腐
昔からの作り方です。70~80度まで加熱した豆乳に、にがりなどの凝固剤を入れ、ある程度固まったら、穴の開いた型に入れて重しをして水分を抜きながら固めます。この型に木綿の布を敷いていたことから「木綿」の呼び名が付きました。表面に布目の模様があるのが特徴です。
○絹ごし豆腐
穴のない型に豆乳を入れ、凝固剤を加えてそのまま固めます。水分を抜かないため木綿豆腐よりも濃い豆乳を使うのが一般的です。なめらかな見た目と食感から、木綿に対して「絹」の名前がつきました。
○充填豆腐
いったん冷やした豆乳に凝固剤を加えて直接パックに入れます。密封してパックごと加熱して固め、もう一度冷却して作られたものです。密封したパックの中で凝固から加熱殺菌まで行われているため、日持ちします。木綿豆腐や絹ごし豆腐のようにパックに水は入っていません。食感は絹ごし豆腐のようになめらかです。
栄養豊富な豆腐を楽しもう
製法によって栄養素の違いはなく、どの豆腐が優秀ということはありません。同じ量ならば水分の少ない木綿豆腐のほうが、栄養価が高いといわれますが、どの豆腐も「畑の肉」と呼ばれる大豆の栄養素を、ほぼ丸ごと含んでいます。好みの食感で選ぶと良いでしょう。
とくに体を作るために大切な良質な植物性たんぱく質をはじめ、生活習慣病の予防に注目されるオメガ6系の不飽和脂肪酸であるリノール酸やリン脂質のレシチンが豊富。また骨粗しょう症や更年期障害の症状、男性の前立腺がんなどの予防効果が期待されるイソフラボンも注目すべき栄養成分です。
豆腐の凝固剤の一つとして使用される「にがり」は、海水から塩を除いたあとに残った液体です。ミネラルが豊富で、カルシウムの吸収を助けるマグネシウム、ナトリウムの排出を促すカリウムをはじめ、骨や歯の成分になるカルシウムなどが含まれます。
手軽で栄養たっぷりの豆腐。使い切れなかった分も上手に保存し、毎日の食卓に活用したいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾