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腐っていないのに、なぜ豆腐? 「やっこ」と呼ぶ由来とは 意外に知らない豆腐の謎

公開日:  /  更新日:

著者・教えてくれた人:和漢 歩実

著者:Hint-Pot編集部

大豆が原料の豆腐(写真はイメージ)【写真:写真AC】
大豆が原料の豆腐(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 日本の食卓に古くからなじみがある豆腐。大豆を原料にして作られますが、腐らせることはしていないのに、なぜ「豆腐」と書くのでしょうか。また、豆腐を「やっこ」と呼ぶことがありますが、その理由とは? 10月2日は「豆腐の日」。意外に知らない豆腐にまつわる謎を、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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「腐」の意味に理由がある

 豆腐は約2000年前の中国が発祥の地とされています。日本に伝わった時期は定かではありませんが、奈良時代とみられ、主に僧侶や貴族の間で食されてきたようです。江戸時代になると、豆腐料理の専門書「豆腐百珍」が人気になるなど、庶民の間でも広く親しまれる食品になりました。

 豆腐は、水に浸した大豆を粉砕し、水を加えて加熱したあと、こした液体(豆乳)ににがりなどの凝固剤を加えて固めたものです。作る工程に「豆を腐らせる」ことはありません。なのに「豆腐」と書くことに、疑問を感じませんか。

 諸説ありますが、これには「腐」の意味が、今のように「腐敗」ではなかったことに関係する説が有力です。「腐」という漢字は「府」と「肉」に分けられます。もともと「府」には貯蔵する「庫(くら)」の意味があり、腐とは「獣の肉を保存しておく状態」を表わすものでした。そこで保存しておいた肉が死後硬直後、熟成してやわらかくなることから、いつしか腐とは、肉にかかわらず「やわらかい状態」を指すようになったようです。

 したがって豆腐とは、「腐った豆」ではなく「やわらかい豆」という意味から名が付いたといわれています。今は「腐」を使わずに「豆富」と当て字が使われることもあります。豆腐の優れた栄養面を考えると、「富」のほうが豆腐のイメージと合致するかもしれません。