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日本は進化、スウェーデンは原点回帰 アメリカで教育中のママが考える、デジタル学習とのつきあい方

公開日:  /  更新日:

著者:i-know

学校と共有利用している学習アプリで、文章読解の宿題が出ることも【写真:i-know】
学校と共有利用している学習アプリで、文章読解の宿題が出ることも【写真:i-know】

 日本では、小・中学校で1人1台、デジタル端末を配布していますが、ハワイはどうでしょう? 8歳、6歳の子どもをハワイで育てる主婦ライターのi-know(いのう)さんは、日本とハワイ、そして世界のデジタル学習事情を通して、あることに気づいたそうです。第71回は「デジタル学習をどこまで取り入れるか」です。

 ◇ ◇ ◇

日本のデジタル学習の現状

 日本では、公立の小・中学校を中心に、児童・生徒1人1台のデジタル端末(タブレットなど)が配備され、宿題など自宅学習にも活用されています。これは、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」に基づく取り組みです。

 新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけで、オンライン学習の必要性が高まったことから、急速に整備が進められました。そして、2021年までに全国ほぼすべての自治体で端末の配備が完了しています。

 プログラミングやICT教育に力を入れているご家庭では「無料でデジタル教育をしてくれるのはありがたい」と感じている人もいるでしょう。また、経済的に子どもにデジタル端末を1台持たせることが難しいご家庭にとっては、デジタル格差を埋められる良い機会になるかもしれません。

 しかし、「1人1台、デジタル端末」は喜ばしいこと……かと思いきや、すべての家庭にとって手放しで喜ばしいものではないようです。日本のママさんのなかには「小学生のうちから、デジタル漬けにしたくない」「宿題までデジタル化するのは違うと思う」という意見も。

ハワイではデジタル端末の持ち帰りは不可

 では、ハワイはどうでしょう。学校や州によって異なりますが、現在、私の子どもが通う公立小学校では、ノートパソコンが1人1台支給されています。日本と異なる点は、そのノートパソコンを家に持ち帰ることができないということ。

 宿題はというと、私周辺では昔ながらの紙の宿題がほとんど。ときどき、学校と共有している学習アプリで宿題をすることもありますが、その際は自宅のノートパソコンを使っています。

 アメリカで「1人1台、デジタル端末」が実施され始めたのは2000年代からと言われています。コロナ渦で通学が制限されていた際は、公立小でもすぐにオンライン授業に切り替えるなど、対応の早さが際立っていました。

 さすがデジタル先進国! と言いたいところですが、実際のところ、低学年の子どもたちがが長時間パソコンの前で授業を受けるのは難しく、集中力が続かないという現実的な課題もあったそうです。

スウェーデンではデジタルと紙教材を使い分けるように見直し

 同じくデジタル学習をいち早く始めたヨーロッパの国に、スウェーデンがあります。しかし近年、その方針を大きく転換をしたことが注目を集めています。

 それは「紙の学習に回帰している」こと。スウェーデンでは2000年代より、学校でデジタル端末を1人に1台配布し、紙の教科書を廃止するなど、デジタル学習に全振りしました。

 ところが、OECD(経済協力開発機構)が行った学習到達度調査(PISA)などで、読解力の低下が指摘されるようになり、2023年にはスウェーデン教育省は方針を見直しました。現在の方針は、デジタル教材を使う教科と紙の教材が適している教科を分けて運用するという形で、より柔軟なバランス型の学習へ移行しています。

 おそらく、どこの国をとってもデジタル学習に関しては、まだ「これが正解!」というものは定まっていないのでしょう。国や学校の方針に振り回されすぎず、“親が思う正解”を子どもに示してあげることが大事なのかもしれません。

 次回は、先ほど少し触れた“宿題”について、日米にどんな違いがあるのか、さらに深堀りしたいと思います!

(i-know)