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秋の味覚・焼き魚 しょうゆを直接かけるのはマナー違反? 大根おろしと合わせた上手な食べ方とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

サンマの塩焼き しょうゆをかける?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
サンマの塩焼き しょうゆをかける?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 サンマの塩焼きなど、秋は魚もおいしい季節です。焼き魚といえば、人前で食べるときに、しょうゆを直接魚の身にかけて良いのか迷うことがあります。また、添えられた大根おろしの食べ方に決まりはあるのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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しょうゆをかけるのは魚? 大根おろし?

 食を楽しむには「おいしい」と感じる食べ方が一番ですが、周囲に人がいる際はマナーが気になることもあるでしょう。

 焼き魚を食べる際、しょうゆを直接魚にかけることがマナー違反とされる理由としては、魚本来の味を損なってしまうこと、見た目が悪くなることや身が崩れやすくなり食べにくくなることが挙げられます。

 しょうゆを使いたい場合は、添えられた大根おろしにかけましょう。しょうゆをかけた大根おろしは「染めおろし」と呼ばれ、ほぐした焼き魚の身にのせて一緒に食べます。大根おろしの食べ方にとくに決まりはありませんが、魚にはすでに塩がふられているので、まずは、しょうゆをかけずにそのまま味わうと良いでしょう。

 焼き魚に大根おろしが添えられていることが多いのは、胃腸への負担を軽減し、消化を助ける働きが期待されるためです。大根にはでんぷん分解酵素の「アミラーゼ」やたんぱく質分解酵素の「プロテアーゼ」、脂肪分解酵素の「リパーゼ」が多く含まれています。

 また、大根おろしのさっぱりとした風味は、脂のしつこさをやわらげて口の中をさっぱりさせる口直し効果も期待できるでしょう。最後まで飽きずにおいしく食べられます。

 しょうゆを焼き魚にかけることが必ずしもマナー違反だとは言い切れませんが、作り手や周囲に対して配慮した食べ方の工夫としては、しょうゆは直接かけずに魚そのものの味をまず楽しみ、次に染めおろしを合わせるなど、味の変化を楽しむのが良いでしょう。

焼き魚を食べる際に気をつけたいこと

 焼き魚をきれいに食べるためには、食べる前にまず中骨に沿って頭から尾に向かって箸をそっと入れましょう。背びれや尾びれも先に箸で取っておきます。こうすることで身がほぐれやすくなり、食べやすくなります。取り外したひれや骨は、お皿の奥(上)側にまとめておくのがマナーです。

 食べる際に気をつけたいのは、食べる順番です。いきなり腹部から食べず、上の背中部分を頭(左)部分から尾に向かって食べ進めていきましょう。次に下の腹部を頭部分から尾に向かって食べます。

 表側を食べ終わったら、ひっくり返さずに頭から中骨の下に箸を入れ、尾に向かって滑らせ、頭をつけたまま中骨を取り外します。骨の下の身を同様に上の背中部分から食べ進めていきましょう。

 食べている際に、口の中に骨が入ってしまったときは、口に指を入れて取り除くのは避けてください。必ず手で口元を覆ってから、箸で取り除きます。お皿の奥にまとめて置きましょう。

 焼き魚は、食べ方ひとつで印象が大きく変わります。マナーを意識するシーンで食べる際は、しょうゆの使い方や大根おろしの組み合わせ、身のほぐし方や骨の扱いなど、ちょっとした所作を意識するだけで、見た目も美しく、最後まで気持ち良く食事を楽しめるでしょう。秋の味覚をより一層堪能してみてはいかがでしょうか。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾